あの有名な『スイミー』の作家さん。
まず前置きからして、専門的かつ深遠なことを言っているようで、まるで中身がないからすごい。
皮肉じゃない。褒めてる。
というか、それがこの本の素晴らしい所なのだ。
扱うのが実体がない「平行植物」ゆえに、前置きもそれに倣ってるのだろうか。
例えばこんな感じ:
(羊を生んだ植物の例)
あるいはまた、正真正銘の科学的実験の時代が始まろうとしていた17世紀に、クロード・デュレも動物を生んだ木について語っている、というふたつの事実を考えあわせてみれば、自然界のいかなる既知の法則にも拘束されない植物が発見されたことによって、必ずしも客観的正確さをもってそれらの新しい植物の本質を扱わない記述が現れたとしても不思議ではない
簡単に言うと「この本は空想の植物について書いてるから、主観的だし想像を大いに羽ばたかせてるけど、その辺よろしくー」ということらしいが、周りくどさ半端なくてこんなん笑っちゃうよ。
植物の分類の話かと思ったら碁の対局に通信料がいくらかかったとか、地層の発見話に、怪しげな透視術を使う巫女がどうのこうのとか、ふざけた話が当然のようにまぎれこんでるのも面白い。
興味を引いたのは「中身」をふたつ持つという、カラツボ(絵)。
煙突みたいな形で、カラツボの中身は空洞になっている。
そして、その空洞はまわりの空間とつながっている。
空間がカラツボの身を包んでいるから、カラツボの身もまた「中身」なのだ。
中身が中身を包んでいる。
(という風に読み取った。間違ってるかもしれない)
むかし荒俣宏『理科系の文化誌』、サン=テグジュペリ『人間の土地』、手塚治虫『三つ目がとおる』のボルボックなどから影響を受けて、生き方が人や動物と全く違う「植物」というものを私はある種のエイリアンだと思っているのだが、カラパイアを読んでると「やはり……」と感じてしまう。
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実体のある植物でもこれだけのヘンテコさを備えているので、「平行植物」にはより大きなヘンテコさと、壮大さと、もっともらしさを望んでしまうのも正直な気持ちだ。
願わくば、「平行植物」と「非平行植物」の境界がより曖昧で、面白い世界にならんことを!
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