2015-08-19

『月明かりの道』ビアス ★3

こちらで読んだ:ghostbuster's book web.


芥川龍之介『藪の中』に影響を与えた作品のひとつということで読んでみた。
ある屋敷で起きた殺人事件について、3者3様の視点で描く。


まずは息子が語る、事件のあらまし。
母親が寝室で殺され、父親が憂鬱に取り憑かれてしまったこと。
その後、夜道を歩いていた時に、父親が何かを見て驚愕し、そして姿を消したこと。

次に、囚人のように日々悔恨のうちに暮らす男の語り。
ネタバレ:彼はかつての父親で、妻を絞殺したこと、月明かりの道で死んだはずの妻を見、恐怖に慄いて生活を捨てたことを告白する。

最後に、霊媒師によって呼び出された被害者本人。
この世界の孤独を嘆き、ある夜の出来事を語る。


普通の生者3人にしないところが面白い。
最初に家から出てきた男は誰だったのか?という謎は残るものの、3人の語りを合わせて事件の全容を理解させ、理解させる事で皮肉と悲哀を引き出す、というつくりだから、そこは『藪の中』と趣旨が全く違う。


2章の男の言葉は遺書だ。
そして3章で母親は
「まもなく息子も見えない者の世界に移ってくるでしょう」
「そうしてわたしは永遠に会えなくなってしまうのでしょう」
と言うから、語り手3人とも、孤独のまま終わってしまうのだろうなあ。

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