リンカーン・ライムシリーズ 6作目。
あらすじ
ハーレムの高校に通う16歳の少女ジェニーヴァが暴漢に襲われる。現場にはレイプパックとタロットカード「吊された男」。
強姦未遂事件として捜査を始めたライムとサックスだったが、
執拗につけ狙う犯人を前に、なにか別の動機があると気づく。
それは米国憲法成立の根底を揺るがす140年前の陰謀に結びつくものだった。
※以下ネタバレあり
見所
ライムの決断。望み薄な回復可能性にかけて、今後もリハビリを続けるか否か。セリットーのトラウマとの葛藤。
歴史を絡めた展開。
感想
プロットがえらい凝ってる。メインのジェニーヴァが狙われる事件、140年前の歴史的背景を持つ事件、
登場人物の葛藤、少女の私生活など謎がいくつも登場し、
意外な展開が重なり、最後はすべて解決。読後感は良い。
ただそういった謎が多い分解消にも紙幅を取られていて、
「こいつは強敵になりそうだ!」と思った人物が意外と早い退場。
追い詰められる感じが物足りなかった。
もっとライム達をかき回してくれるかと期待してたんだが。
さらには、危機迫るたびに都合よく助かるので、
「今度もどうせ助かるんだろう」という意識が芽生えてしまったのも残念。
本来なら犯人との対峙や襲撃でスリルを味わいたかったんだが、
一番ビビったのは誤射のシーンだった。
ジェニーヴァにもあまり肩入れできなかったしなあ…良い子なんだけども。
機転の利く子なのに「命狙われてるのわかってるのか?」というシーンが何度もあるので、
しまいに私の心は「もうどうなってもしらんぞ」モードに入ってしまった。
そんな中でもベル達は護衛を続けなくちゃいけないんだが。
不満点ばかり書いてしまったが、
「もしかしてこうか…!?」「これ、実はこうだったのか…!」的なプロットの妙はさすが。
ページを進める原動力になったし、おなじみの登場人物2人に試練が課され、
克服する過程もファンなら見どころなのでは。
キャラクター造形も面白かったし、憲法修正第十四条の話も興味深かった。
政治系ミステリもまた読んでみたいところ。