2015-12-29

思い出のクリックゲー「Vectorpark」とその進化

前回素敵なゲーム「Monument Valley」について書いたのですが、そういえばむかし似た雰囲気のゲームがあったなーと、ちょいと探して見ることにしました。

「たしか相当むかし……Flashが流行り始めた頃にやった……Parkってタイトルだっけな?」

あったあった、そうだ、
Vectorpark.comの「Park」ってゲームだ!(要Flash)

タイトルを見るとどうやら2001年のものらしく。
もう15年も経つのかー、よく残っててくれたなあ……。


内容は不思議な世界観を味わう、クリック探索ゲーム。

ともかく、説明もないし、クリア条件が示されるわけでもなし、まず何をすればいいやら?
マウスを乗っけたり、クリックするとアクションがあるけれど……ふむ?
で、何を終わりとして見ていいやら……?

そんな感じの作品。
いま遊んでもやっぱり不思議でした。

(ゴンドラで別天地から帰ってきて、メリーゴーランド作成機みたいなのや、木のてっぺんに降る雪を覗いて、オバケの体が8ヶ所出てくるまで待ってみたけど、何もないなあ。これで終わり?それとも他にやることあるんかな。)




終わりのないゲームに首をかしげながら、公式サイトを覗いてみると、おお!
どうやら作者のPatrick Smithさん、現在iphone向けのゲームも制作しているらしい。

さらには、最新作「Metamorphabet」で、Appleデザイン賞やIGF2015(インディゲームの祭典)美術賞を受賞したとか……へえ~~!すごいなあ!




受賞作は、アルファベットが変形していく知育ゲーだそうだ。
なるほど、こういうタッチで遊ぶ系はまさにスマホにぴったり。

 

15年も昔に遊んでいたFlashゲームがスマホに登場し、さらに遊びやすく、楽しく進化している……これがとても新鮮でした。

さらには、クリックゲーがスマホの登場により、疑似触感を得られるようなインタラクティブ性をもつものに変わるということ。
そのようなゲームデザインを考える制作者に感動を覚えたのと、あとスマホのタッチってなんなん?タッチでゲーム内のものを自由に動かして遊べるって、すごくない?と、改めて現代のツールのすごさに恐れいったのでした。

いやー、面白いな~~。
もうちょいしたらついていけなくなりそうだな。

2015-12-27

大好きなゲームができた!「Monument Valley」

「Google Playセールしてんのか〜」
「おお。これ評価いいな〜」
「ポチー」

と試しに買ってみたゲームが、めちゃくちゃツボなゲームだった!

ギミックを解きながら姫をゴールまで導くパズルゲームなんですが、エッシャーの世界を探検しているようで面白い!


一見行けないような道でも、錯視を使えば行けたり。この錯視ギミックには感動すら覚えました。
私たちもこんな風に、次元を行き来してあっちこっち行けるようになったら楽しいのにな〜(できたら楽しいどころの話じゃないか)。

あと相棒のゴーレムくんというのが登場するのですが、こやつがとてもかわいい。


危ない時助けてくれたりねー、頼れる奴なんです。

姫はタップで動かし、ゴーレムはスライドで、という操作の分け方も、工夫してるな〜と。
姫のとてとて歩きも、迷宮を探索する雰囲気を損なわず、かつ遅さでストレスを感じない程度に調整されてると感じました。

ギミック楽しい、物語性も感じられる、音楽やデザインもいい……ほんと、素敵なゲームと出会えて良かった!


まず購入すると10章+1遊べて、追加購入でさらに8章遊べるようになります。
これだけ人気だし、続編こないかのー。また最初からやり直すべな。

monument valley 公式




こんな記事があったので追記しときます。
Appleデザイン賞「Monument Valley」開発チーム、VRゲームに挑む « WIRED.jp

2015-12-12

近況:悩みふたつ

腰をまたぶっ壊すの巻

ちょっと言葉遣いが悪いのですが、それくらいのニュアンスで痛めてしまったー。歩行困難。しかも旅行中に!

土曜の午後診療してる整形外科をなんとか探して、見知らぬ街を介添されながら、とて、とてと歩き、鎮痛剤と骨盤ベルトを買い、なんとか乗り切りました。
列車・バス・飛行機の振動が腰に本当に響いて、人間の体はいつもこの衝撃を受けて生活しているのか、といった感慨も。健康な状態だと筋肉か何かがクッションの役目を果たしてくれているのだろう、肉体は偉大。

レントゲンでは骨に異常なし、椎間板ヘルニアでもなし、筋肉の炎症との事。前日荷物を背負って歩き過ぎたのが原因だと思うのですが、寒さも一因にはあるかなーと。
だってそれまで鹿児島は日中20度もあって、コートなんていらない状態。それが東京に着いた途端、寒波で9度!えらいこっちゃ。
その時は鹿児島も寒かったらしいのですが、まあ運も悪かったのだろう……。

その後しばらくしてからバイトが入ってたんで、時間短いしまあ頑張ればいけるか……?と考えてやったらいけず。いやー、ほんと腰ぶっ壊れるかと思った……。
いづろの横断歩道なんて2回に分けないと渡れなくて、歩こうとしても足が前に進まないんだこれが。市電の停留所に腰おろして休みながら渡りきりました。

今はだいぶ良くなってて、歩行自体はできるようになってます。ただ立ったり座ったり、体を曲げるのがしんどい。じわじわストレッチを始めていかないとなー。


スマホゲーに悩まされる

腰痛とちょっと関連するかも……しないかもしれませんが、「モンスターギア」という装備集めゲームを、前からやったり止めたりしてて。腰痛で寝たきりだったので、暇つぶしにまた始めてしまった訳です。

するとさすがスマホゲー、がっちり中毒症状を生み出し、まーた「時間を浪費してしまった……やめたい」→「いやでも進化トリスとルーンにゼウスにカグラキ腕まで揃ってもうた…クーラでフグ余裕でそっからオーブ足してシカミもいけたし…キチアトも一式きたから水クエも行けるし…(早い話が結構遊べる装備だからもったいない)」→「うわまたやってる……スタミナ分しかやらないつもりが……」→「うわー」→「うわー」
って感じで自己嫌悪のループに。

こういうの、適度にできる人が羨ましい。
どうも私は、ゲームをやる時間以外にもWikiを見て装備の適合を考えたり、何を集めるか考えたり……という事に時間を使ってしまって、程良くやるって事ができないのですね。
もう物理的にスマホゲーができないよう、1回スマホ売ってガラケーにしようかと考えたりもしたんですが、今日ようやく心を決め、アイテム全部売りました。
売っちゃった……
程良くできれば長く楽しめただろうに……。

私にとってスマホゲーは、この喪失感を味わうのが終着点なのであろうから、最初から手を出さない事が正解なのだった。

しかし、スマホゲーの中毒性という仕掛けは、本当によくできてるよなー。

2015-12-09

キョロちゃん「開かずのカンヅメ」(ネタバレなし)

チョコボール「開かずのカンヅメ」

実は先日、メルカリで銀のエンゼルを5枚買っていたのだった!
あれって不思議な事に、同じものと交換できるのだから価値としては銀5枚=金1枚なはずだけど、金は2倍以上値段高かったよ。
金はなかなか出ないから、それ自体に付加価値つくんかなー。


って事で、届いたー!!
箱がかわいい。

注意書きがある。
缶自体がおもちゃなので、中にはおもちゃ入ってないよ、と。了承して、開封!

じゃじゃん!開けると謎解きセットが。

こんな感じ。
思ってたより色々入ってた!

さっそく解いてみた!
難易度は子供ができるくらいなので、楽勝!
だけど面白かったです。SCRAPスレに書いてあったけど、「なるほどね〜」ってなりました。

まあ大人がやるとすると、そこまでお金出してやるほどではないかな?
私はエンゼル1000円で買ったのですが、そのくらいが相応かな〜と思います。

子供が遊ぶとしたら、もっと楽しめると思うのでまた別で!
ヒントページも充実してます。

2015-12-04

謎解きガイドブック『消えた6人の謎』★5


東京旅行にて3ヶ所、そしてネットで4ヶ所、無事終了!
以下感想!


物語

ある日突然、東京のあちこちで姿を消した6人の人物。その失踪には、ある宝石盗難事件が関係しているという。探偵であるあなたは、彼らの足どりを追って捜査を行う。 手掛かりは、各地点に残された大量の暗号やパズルだけ──。

という概要なのだけど、主役の頭脳探偵にいまいち親近感もてなかったな~。
この本に不満があるとすればそこくらい。


全体の難易度

チェックポイントの周遊は簡単。
けどその後の謎解きが、ハマるとなかなか抜け出せなかった!
例えば六本木は、周遊20分、そこから3時間。連れとウンウン唸りながらやってた。
かと思えばすんなり終わった場所もあるし、周遊としてはちょうど良い難易度。


現地で謎解き

(秋葉原、浅草、六本木)


  • チェックポイントが観光に合わせて設定してあって良かった。こういう機会がないと行かないような場所も。けど謎解きに夢中になると、観光どころじゃなくなるんだよな~。気になったとこはガンガン寄り道していく方が街を楽しめそう。
  • わからない地点があるとしばらくそのへんウロウロする事になるし、穴埋めが終わってから移動がある場合も。なので思ってたよりも体力を使った。
    旅行で、よく知らない土地をあちこち周り、休むところを探したり、食べるところを探したり、時には迷ったり引き返したり……というのは結構疲れる。
    今思えば1日1ヶ所で十分だったなあ。他に予定がなければ1日2カ所。
  • 疲れたのは寒さのせいもあると思う。そのとき鹿児島は暖冬で22°、コートいらずの気温から、いきなり9°……寒波の只中へ!
    次は暖かい季節にやるぞ。
  • 六本木のとあるポイントでは、警備員のおじさんに「見つけるの早かったね〜」と声をかけられて面白かった。みんなここで結構悩んだり、通り過ぎていく人もいるとか。しかしおじさんとしては「答えを教える訳にもいかないもんねえー」って。RPGのNPCみたいだ!
    現地ならではのエピソードができるのは、街歩きならではのいい所。


ネットでの謎解き

(お台場、原宿、神保町、ラスト)


  • 歩き回らなくていいから疲れない!やっほう!
  • ストリートビューが意外なところまで網羅してて助けられた。すごい。
    ビューでわからない所は、画像・ワード検索でだいたい解けた。
    まったくわからなかったのはお台場の1ヶ所だけかな?そこは推測で。
  • 足を使う探索とはまた質が違って、これも面白かった。ストリートビューを駆使する謎解きがあってもいいのに……ネットの情報は更新が多々あるから、難しいのかなー。


周遊謎はだいたい街に散らばる小謎をたどるものと聞いていたけれど、この本も然り。
でも謎解きも観光もしたい!というニーズにはぴったりだし、6+1の街を探索するボリュームを考えたら、お得な本でした。
購入を迷ってる方はAmazonで内容もいくらか見られるようです。

2015-11-24

髪切った〜

髪ショートにして、色も明るくしようと思ったんだがイマイチ明るくならなんだ。残念ー。
次ブリーチしてAshカラーにしてみたいなー。
美容師さんとは謎の明治政府談義になった。


で、帰りに天文館の菓々子横丁へ。
土産を買うか、2階のギャラリーに寄るくらいしか行く機会なかったんだけど、1階の休憩所はコーヒー100円、+焼どうなつ170円だって。やす〜。次から小休憩したくなったらここ来よ。
焼どうなつは軽くて優しい甘さだった。
なんだっけなーこの味、蒸気屋の別のお菓子でも食べた味だ。かすたどんの生地?
ケーキも美味しそうであったよ。

薩摩蒸氣屋 菓々子横丁(地図)
https://goo.gl/maps/AvbTFsUBGTw


夜の照国神社。

あさってからは東京旅行。
今回予定がパンパンです。

2015-11-15

格ゲー関連記事削除

ハマってた頃の思い出とばかりに未練がましく残しておいたのですが、この度一括削除しました。大会やイベント関連記事だけでも150ほどあって、好きでまとめてた事ながら、よく頑張ってたな~と感じます。
ちなみにプレイヤーの配信記事まで含めたら450ほどあり、自分でも引くレベルでした。まさしくストリームモンスターですね。

とはいえ記事のおかげで、twitterでは格ゲーのことを話せる人もできたし、タイムラインで一緒にプレイヤーを応援している時、素晴らしい大会が終わった後に共に抱く感慨などは、ネット上の事とはいえ、リアルだと格ゲーの事を話せる人がいない私にとってとても大切なものでした。

twitterをやめた事もそうだし、こういう環境を自ら崩さなければならないのは非常に苦しいのですが(おかげで先月あたりからずっと自律神経がおかしい)、こうして格ゲーから全く離れて、時間経過を待つしか対処を思いつかず。結局こうなってしまった事にはため息しか出ません。
これまで関わって下さった方には感謝しかないです。

ちなみに格ゲー自体は依然好きで、こないだスト2のTAS見たりしてました。壊れたコントローラーで〜だったかな?そんなタイトルの。
面白かった!と思うとまたブログ等に書きたくなってしまうので、そうならないようにするのが難しいのですが……。時間が経てば慣れるかなあ……ハァ

これからは本をたくさん読んで、読書家の輪を広げられたらいいなーと考えています。さっそくGoogle+の本好きサークルに入って、コメントしてみたり、おすすめ本にあったものを読んでみたり。いいねをもらえるととても嬉しいものですね!
いい加減ピンチョンも読まねばと、重たい書籍を枕元に置きました。悩みを抱えた時はいつも本に励まされます。

2015-11-13

『モンスターズ』B.J.ホラーズ編★2


『モンスターズ 現代アメリカ傑作短篇集』

序文に惹かれて読んでみたのだけど、残念ながら私にはイマイチでした。
最初の2篇で合わないなあ、と感じたのであとは拾い読みになってしまったけれど……全部で15篇+漫画が1篇、1, 2, 6, 9, 12, 13, 16は読了。

面白かったのは6番目の『わたしたちのなかに』エイミー・ベンダー。
日常に潜むゾンビ性を皮肉った作品で、一見無関係にみえるコラムを並べたつくりが、独特の不思議な雰囲気を生んでいる。

でも私が期待していたのは、序文にあった「東海岸ビッグフット会議」や弟との思い出のような、そっちなんだよね。だってベルトのバックルにビッグフットがついてないと、「ビッグフット・ヴァージン」なんて呼ばれる世界だよ?
面白すぎる!!

それは編者の体験からきた話だけど、想像力でその面白さを超えてきた話が、読んだ中には見当たらなかったなあ……。序文が一番面白かった。


参考




2015-11-05

プロジェクションマッピング見てきた!

今月かごしま県民交流センターの広場でやってる、プロジェクションマッピングを見てきた!薩摩をモチーフにした映像で、10分くらいとラジオでは言ってたかな。体感だともっと早く感じたけど。
綺麗だったので近くの人は行ったらいいと思う!

上映前。結構人いた〜!

上映中の一幕。
旧県庁舎の壁が剥がれてカラクリが登場!

詳細はこちらへ!

『謎解き父さん』伴田良輔★5

マッチ棒のお父さん、角砂糖のお母さん、長男のマチオ、長女のエリカ、猫のムース―町山家は「考える家族」。数式や専門用語をいっさい使わず、数と無限と世界を考える一家の物語。タネもしかけもありません。お父さんが繰り出す、手品のような12の問題。答えがわかっても、やっぱり不思議!
Bookデータベース

紹介文どおり、奇妙だけど親近感のわく家族と一緒に、これまた奇妙な問題について考える。

著者は『傑作パズル100』の中で、数学問題を身近なもので表現したパズル王サム・ロイドについて語っていて、この本は彼に倣ったものかもしれない。

難しい言葉を使わず、パズルみたいに気軽に楽しめる問題ばかり。
毎回最後を締めるお母さんの一言がほんわかする。

ここから先は、それぞれの問題が数学のどんな話題を扱ってるのか調べたもの。
調べてみると難しいなーってことが、この本では感覚的にわかるのが、面白いなあ。
おすすめの本!


心の中のホテル

ヒルベルトの無限ホテルのパラドックス
ホテルが一部屋空いた場合も!
無限ホテル問題1
無限ホテル問題2
Wikipedia

世界を作る種

グランディ級数 - Wikipedia

世界のスキマ

フィボナッチ数列と面接1のパラドックス - Epsilon Delta

見えないケーキ

ピタゴラスの定理

尾行しないで蟻の行動を知る方法

一筆書き - Wikipedia
一筆書きの法則

迷いこんだ蟻

ジョルダンの曲線定理 - コトバンク

蟻と蜜

サム・ロイドのパズル「仲の悪い隣人」

ありえない立体

不可能物体のハイパーカードという分野?らしい…
すごい!!
Puzzle of Mine
不可能物体ぎゃらりぃ

神様のテーブル

先手必勝ゲーム
二人零和有限確定完全情報ゲーム - Wikipedia

神様は知っている

確率の話。
この考え方馴染まない〜!けど、そうなんだなあー。

魔法の橋

マッチ棒パズルの橋渡し

何もないということ

哲学!

おまけの問題

「√2 = 2の証明」あるいは「斜面と階段のナゾ」 - togetter
たぶんこれと同じかな?
あとで読む!

2015-11-02

ゲームブック『ふたご島からの脱出』クリア〜

ようやく終わった〜!
脱出ゲームブック第2弾『ふたご島からの脱出』をクリア。前作は熱中に熱中して、クリア時も大きな感慨が得られたのだけど、今回は残念ながらイマイチでした。プレイも後まわしになって、だいたい2週間かかったかなー。

※ネタバレにつながる部分は黒塗り(反転)にしています。これからプレイする方は読まないようご注意下さい。


2015-10-26

近況

パズル三昧

SCRAPのゲームブックに熱中したあと、パズル本にも手を伸ばしてみた!
ゲームブックは物語への没入感が大事な要素だから、パズルだけ解くのとはまた違うんだけどね。
まずは『謎解き父さん』と『巨匠の傑作パズルベスト100』というのを借りて、頭を悩ませてるとこ。
特に『謎解き父さん』は子供向けのパズル本だけど、数学的なものの見方がわかるっていう優れものだった。

そんで同時に、ゲームブック第2弾やアプリ版人狼村もやりはじめて……なにやら頭を使う事ばかりだ!

さらにポーの『群衆の人』を読んだら、これまた良心シリーズ以上に謎な作品で、でもヒントっぽい事書いてあるのよな。こういう所が「解けるなら解いてみたまえ」と煽られてるようで、性格悪いまた考えてしまう。
『巨匠の傑作〜』によれば、ポーもパズル好きだったらしいぞ!さもありなん。

最近ネーム書くのもパズルに思えてきた。

2015-10-24

『ウェイクフィールド』ホーソーン★4



不思議な話だったー。
社会システム、疎外された男。
珍事を分析する視点の語りが面白かった。

社会には欠けた役割を補う働きがある。
人の心にも、欠けた状態から立ち直ろうとする働きがある。
自分がいなくても世界は回るのだ。
おかげで、一度離れたら戻るに戻れなくなった男の話。

人の愛情に亀裂を生じさせるのは危険である。それが大きく、幅広く開いてしまうからではなく、あっという間にふたたび閉じてしまうがゆえに!

2015-10-19

『ウィリアム・ウィルソン』『天邪鬼』ポー

ようやく、個人的にずっと悩んでた謎が解けたー!
とりあえずポーの良心シリーズはここまで。


『ウィリアム・ウィルソン』★5

『告げ口心臓』『黒猫』と読んできて、もうからくりを知っているのに泣けてしまった……。
主人公が悪に走る理由もまた、それを悪と知ってるから……「天邪鬼」だろうか。

2015-10-16

ゲームブック『人狼村からの脱出』クリアしたぞーー!!

ゲームブック『人狼村からの脱出』をプレイしました。いや~~~~3日間超楽しかった!
もうほんと、なんか色々と拍手したい。パチパチパチパチ!

※ネタバレにつながりそうな部分は最下部に黒塗りで書いてあります(反転文字)。これからプレイする方は読まないようご注意下さい。


きっかけはSCRAP×東京メトロが現在開催中の「地下謎への招待状 2015」

今度やることになったので、肩慣らし?じゃないけど、SCRAPがやってる他の謎解きにも挑戦してみることに。

これまでリアル脱出ゲームに参加したことがないので、ドキドキだ!

ちなみにもともとパズルや謎解きは好きで、スマホゲーの「マーカスと謎の幽霊屋敷」、過去公演がオンライン体験できる「封印された島からの脱出」「ホーンテッドハウスからの脱出」などはプレイ済み。

下地はできているはずである!

2015-10-15

『黒猫』ポー★4

猫にひでえことするな……かわいそうだろう、ほんとに……

昔の作品だと思ってたら、最後の劇的効果に驚かされた。
死体が眼前にすっくと立つ恐ろしさ。

構図は『告げ口心臓』と同じで、「本能に従う自分(語り手)」と「社会に従う自分(良心)」が対立。
語り手は後者を抑圧するが、代わりに周囲に投影され、警告を送ってくる。
それが黒猫に象徴される。

また、『告げ口心臓』の語り手が悪に無自覚なのに対し、『黒猫』の語り手は悪を悪と知っている。
『心臓』の語り手よりも、分離が進んでない状態?


天邪鬼


作品の重要な要素「天邪鬼」について。
うーん、難しい。

以下、
 a. 本能
 b. 良心
 c. それらを統合した自分
と単純化して書いてます。語り手は「本能」が強い「自分」。


「天邪鬼」が描かれる印象的シーンは次の2つ。

(1) 男が涙を流して黒猫を吊るす。
自分の魂を苦しめるからこそやる=天邪鬼

  • 社会道徳的に悪。
  • 「自分」と「良心」を追い詰める行為。
  • 「本能」が行わせる。

(2) 完全犯罪が成立、の時になぜかペラペラ喋り出し死体の入った煉瓦を叩く。
自分を破滅させる行為=天邪鬼

  • 社会道徳的に善。
  • 「自分」と「本能」を追い詰める行為。
  • 「良心」が言わせる。


で、罪の告白が「天邪鬼」だとしたら、

  • 「自分」を破滅させるからこそ行った。
  • =社会にとって善だからやるわけではない。
  • =自分が救われるからやるわけでもない。

ということで、『告げ口心臓』の最後に書いたことはちょっと違ったかなあ。
自白が結果的に自己救済につながったとしても、それはあくまで結果で、付随的なもの。
自白した理由は「自己破壊の衝動に駆られたから」、それのみ。

ポーの『天邪鬼』という作品に出てくる説明だと、「それ以上分析も分解もできない衝動」というから、やはりそういうことなんだと思う。

だとすると、やっぱり「良心」と呼ぶのは憚られるなあ……。
だって自分を破滅させようとしてるのに、「良い心」かあ?
納得いかないんだよなあ。
だいたい「本能」も「良心」も、「自分」だけど、善悪の基準違うし。

ヒートアップしてきたとこでWikiを読んだら、英語では「良い」という意味を含まないらしく、訳の関係もあるのかもしれない?ふーむ。
Wikipedia - 良心



しかし『ウィリアム・ウィルソン』を読むと、この自己破壊衝動のあまりの強さに驚く……。
あまりに悲劇的で理解が難しい……。
『天邪鬼』の感想と合わせて、話はつづく。



関連



2015-10-06

変態古典

芥川龍之介『藪の中』では死霊(夫)が多襄丸のことを「盗人」と呼ぶが、ということは何か盗んだという事実を知っていたのではないか?という論について、「じゃあ他に何て呼び方があるんだ?強姦魔?それって昔から使ってた言葉なのか?色狂い……はちょっとなんか違う感じだし。昔はレイプシーンをどう描いていたんだろう?」といった疑問から調べて行き当たったページ。

(論については、だまして人気のない藪に押し込んで手籠めにして……っていかにも盗人がやることだから、夫が死んだ時点で盗まれてなかったとしても、そのイメージで「盗人」と呼んだっておかしくないんじゃないか、ということで落ち着いた)


前置き長いけど、面白かったので紹介。
花山院むちゃくちゃすぎる。


2015-10-02

『告げ口心臓』ポー★4


原題『The Tell-Tale Heart』

「Tell-Tale」:秘密を暴露する、の意。
訳によって「裏切る心臓」「おしゃべり心臓」「暴露させる心臓」とも。


感想

ラストにかけて語り手の狂いっぷりがこわい。
老人を殺そうと思った動機、罪の意識の無さ、狂人ではないとやけに主張する、など理解できない部分がいくつかあるけど、特に7日間の儀式が意味不明で、それをさもわかって当然と語ってるところがゾッとする。
以下ネタバレあり。

解説もいくつか読んでみたけど、最初「『黒猫』『ウィリアム・ウィルソン』同様、良心の物語」という説明に拒否反応が出た。

つまり、

  • 黒猫=自分の良心
  • もう一人のウィリアム=自分の良心
  • 老人の眼や心臓=自分の良心

というわけで、「なんでもかんでも“良心”じゃなあ……」と思ったのだった。
あと「意味不明だからこそ感じる恐怖を手放したくない」という気持ちもあった。

これについては、老人の眼の比喩「ハゲタカ」が科学非難の詩「To Science」の中で「=科学、=全てを明確にし魔術を壊す存在」として扱われていることを知って (3) p76 、それなら「老人の眼がなぜ怖いか?」と答えを明らかにする行為もまた、この恐怖――ポーが用意した魔術――を壊す行為になるんじゃないか?なんて考えも手伝った。

しかし好奇心には勝てず、もうちょい探ってみると、この“良心”まわりの考察がかなり深い……。
なんでもかんでも良心の話なのは、題材が普遍的であることの裏返しで、むしろそのモチーフからこれだけ個性の強い短編を生み出していったことに驚くのだった。


(ついでに私は、ポーの作品感想で「良心」という言葉は気軽に使えないと感じる。
良心とは「社会的ルールを守ろうとする心」だが、それが良いか悪いかはまた切り離して考えたいので、「良」が含まれてるとちょっとひっかかるのだ。
良心:Conscienceという単語にも「science」が含まれてたり、由来が「知と共に」だったりで、それについても「神→理性の時代」との関連で惹かれるけれど……まあまた何か思いついたら)



メモ


語り手が罪悪感を感じない理由

語り手は老人殺しを悪いと思っていないようだ。
この理由が、『ポー短編小説の一側面 (1)』松阪仁伺 を読んでわかったような気がした。
『ウィリアム・ウィルソン』についての論だけど、他の作品にも通じるので簡単に紹介:
ウィリアムは「本能に従う奔放な自分」と、「社会の中で生き、ルールを守ろうとする自分」に二分している。
好き勝手したいのにルールに縛られる、これは一般的によくわかることだ。
その葛藤(分裂)を抑えるため、普通はルールを優先し、自分の欲望を我慢することで社会とうまくやってく。
だが彼は逆なのだ。
「社会的自分」を切り捨て、「本能的自分」となって生きる。
この姿こそ本当の自分だと信じている彼は、ルールを破って当たり前、罪悪感を感じない。
……ということだ。
『告げ口心臓』の語り手にも、同じようなことが起きているのでは、と考えられる。

だがあくまでそれは彼が信じる姿であり、実際の姿とはズレがあった。
抑圧された「社会的自分」は、今の行いが悪だと告げにやってくる。
老人の目や、心臓の音に姿を変えて。

『ポーのperverseness再考』松阪仁伺 によれば、この行為には「自分の心を思うままに操作できる」という理性偏重の思い上がりがあり、理性主義に対する批判も読み取れるという。


目が怖いから殺す

老人殺害の動機。
なぜそんなに目が怖いのかは語らない。

  • 心を見透かされるのが怖かった?
  • 監視されることが嫌だった?
    • 養父アランの面影、父の監視:子に社会性を刻み行動を制限する (3) p78
    • 『ウィリアム・ウィルソン』では監督してくるウィルソン2に憎悪を抱く。

上の「罪悪感を感じない理由」を踏まえたあとだと、語り手もなんでここまで目が怖いのかわかってないんじゃないか?と思える。
だから、語らないんじゃなく「語れない」し、老人に不満が全くないのではなかろうか。

目が怖い理由としてすぐに思いつくのは、「自分にやましさがあり、心を見透かされるのが怖かった」だ。
しかし語り手は老人殺しを悪いと思ってないような、「悪を悪と思わない」人間だから、やましさなんて感じもしないだろう。
だったら、他人の目なんか怖くないはずである。
だけど、怖いらしい。

それは、「悪を悪と思わない」のは表面だけで、無意識下では「悪である」と知っているからだ。
老人の邪眼が単数で書かれ、「Evil eye……"Evil I"」と読める (1) p119 のも、この暗示なのかもしれない。

心の奥では自分がどれだけの悪事を働いたか、いかに自分が邪悪かを知っていて、だから老人の目が恐ろしい。
もしかしたら老人に相当な負い目を感じるような、過ちを犯してしまったのかもしれない。
だが表面の自分はこういった認識を受け取らないので、得体の知れない恐怖だけが残る。
老人に過ちを犯していたとしても「当然すべきだった事」になり、負い目もなく老人との関係は良好である。

それで殺そう、と短絡的に考えるのもまた、「殺しを悪と思ってない」「自分にとって邪魔なので、当然すべき事」なのだろう。


夜ごとの儀式

毎日深夜、忍び込んでランタンの光を邪眼に当てたが、目が閉じているので「仕損じた」と話す。……何を?
これも意味不明でこわい。

  • 邪眼だから、光を当てて浄化しようとした……または焼こうとしたとか……?
  • 見られる恐怖を逆手に取り、こちらが見る側になることで恐怖を与え優位に立った。(1) p114
  • この儀式は『ウィリアム・ウィルソン』でウィリアム2の部屋を尋ねるシーンに似ている。
    また、光がウィリアム2が現れる前触れとして使われている。


老人と語り手の一体化

8日目の夜から始まる。
老人が感じている恐怖に語り手が共感すること、どちらのものかわからない心臓の音が鳴ることで、一体化したように感じる。
老人の恐怖か語り手の興奮か、両者の感情が鼓動とともに激しく伝わり、相乗効果が出る。

これまで見てきた通り、語り手は二つに分裂し、「社会的自分」を抑え込んでいる。
だからそいつは、無意識下で作用を起こす。

例えば酒浸りになって、表面の自分は「好きにさせろい!」と思っているが、無意識の自分は「ああ、また飲んでしまった…」と恥じている。
それが周囲に投影されると、他人の目が「また飲んだの……」と責めるように感じられたり、軽蔑、または嘲笑されてるように感じたりする。
それは他人が実際どう思ってようが関係なく、自分の心が見せている。

だから、恐怖を与える老人の目=社会規範を守れと警告する自分(良心)なのだった。

自分が他人に投影されてるんだから、そりゃ一体感も感じるか、なんて考えたけど、『ウィリアム・ウィルソン』や『黒猫』は分裂の方が印象的なので、同一化を描いたこの作品は、対の面を見せているという事なのだろうか。


そして殺しは繰り返される

『ポウの犯罪小説とその同時代性』福岡和子 には気になる文章がある。
「自分の葛藤が親しい他者に転移されるため、そこから逃れるには殺害するしかない。これは自己救済の行為なのである」
「彼をその犯罪行為から、またその結果としての絶望から解き放つものがあるとすれば、
それは自己破壊しかない」
「人に負い目を負う」というスタートは既に切られてしまった。
今後「恐怖を感じる目」を殺し、そして自白し……を繰り返す語り手が頭に浮かび、ゾッとする。
しかもそれは、心臓が鳴り続ける限り――自分が生きている限り続くのだ。

自白が自分を追い詰める行為(自己破壊)なのはもちろんだが、絶望から解き放つ行為(救済)でもあるというのは、社会が罪を償うシステムを供給してくれるからだ。
物語の終わりには警察が登場するので、彼の殺人ループもひとまずは檻の中で中断、となるのだろう。

そして、こういう救いを求める殺人鬼をいつまでも捕まえないのがエリスの『アメリカン・サイコ』だ。
わざとかと思えるほど殺人鬼を捕まえない、よって彼は救われない、よって人殺しも止まない、悪夢の世界である。

ポーが生み落とした魔性の数々は972夜『ポオ全集』松岡正剛を読んでも恐れ入ったが、改めてその底知れなさを感じる。
ポーすげえ。


参考


  1. 『不安のありか -"The Tell-Tale Heart"試論-』西山けい子
  2. 『ポー短編小説の一側面 (1)』松阪仁伺
  3. 『ポー短編小説の一側面 (2)』〃
  4. 『ポーのperverseness再考』〃
  5. 『ポウの犯罪小説とその同時代性』福岡和子


関連記事




2015-09-30

ブログ模様替え

とうとう動的ビューにしてしまったー。
サイドバーのデザイン、過去記事掘りやすくていいなーと思ってたんだ。

しかしいままで調整してきたJQueryやらCSSを全部消さねばならんかった…。
なかなか寂しかった。
いい機会だし、これまでの記事もスリム化しよ。

あとでヴォイニッチとLimechatの記事調整する、映画と雑記のカテ作る、(footerにtopへリンク)



メニューをクリックすると全画面になってしまう!

動的ビューのメニューをクリックすると、「viewitem-open」ていう別モードで開くみたいだ。
こいつが厄介で、全画面になってサイドバーを隠してしまう。
ひとまずサイドが出るようにviewitem-panelをleft:200pxにしてみた。
他のモードで見たらおかしくなっちゃうけど。

参考:1stブログ閲覧ガイド 3


その後、デフォルトを雑誌タイプに変えたのでもっかい編集。
Chromeでソース見ながらページの真ん中にぴょこって出る感じにした。
ほんと今のブラウザって便利だなあ。

メモ:CSSだけでメニューが開いたり閉じたりするアコーディオンを作る! - 9ineBB

2015-09-24

映画『第9地区』★5

一番最後のシーンがすごく泣けた。

ドキュメンタリー風のシーンとリアルタイムなアクションシーンを繋いで作ってある。

オープニングはこんな感じ:
ヨハネスブルグ上空にて突然巨大な宇宙船が静止。
動きがないので人類が中に入ってみると、エイリアンは栄養失調で死ぬ寸前だった。
仕方なく下の空き地にテントを作り救済。

エイリアンは見かけがエビみたいで動きが素早く、猫缶が大好き。
階級があるらしく、ここにいる大半は「働きバチ」で凶暴。ゴミ山を漁っている。

20年後、この地はスラムと化し、付近の治安は悪化。
住民の排斥運動も高まり、エイリアン移住計画が実行されることになった。
計画の総責任者が主人公、ヴィカス。


※以下重要なネタバレあり。

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皮肉な映画

エイリアン(クリス)の方が感情移入しやすい。
「故郷に帰りたい」という願いを叶えるため苦難に耐えている現状、子供や仲間を思う心が描かれる。20年かけて作った燃料が奪われ、希望が絶たれたと考えたクリスが子供に「故郷にはもう帰れないんだ」と言い聞かせるシーンは胸を打つ。

逆に人間は邪悪。
人体実験場、無抵抗のエイリアン殺戮、金のため娘婿の命を売る、醜い殺し合い。

この作品ではエイリアンとして描かれているが、構図は人種差別、民族浄化といった事と同じ。
エイリアンの得体の知れなさはそのまま、自分にとって理解度の低い「何者か」に通じる。
「何者か」も自分と同じように仲間を愛し、慈しみをもつ存在である。
彼らを問答無用に蹂躙することの非道さ。


(だがこの作品がうまいのは、エイリアンを階級制にしていること。
圧倒的に多い「下級エイリアン」のイメージがそのままエイリアン自体のイメージになってしまう。

行動が短絡的で人間にとって危険。
意思疎通が図れず相互理解は無理。
また外見が人から遠いのも、それらを助長している。
人類とは相容れない存在。

さらに人智を超えた兵器を作るのに、一斉蜂起など計画性のある事ができないため、ヴィカス達は彼らをなめている。「すごい兵器を作る虫」くらいにしか考えていないだろう。

これらのレッテルが、意思疎通ができ、共感可能な「司令的立場のエイリアン」にまで貼り付けられ、問題解決を遠のかせている。)


クズな主人公が変わる時

言葉が悪いが、「ヴィカスくずだなー」と思うシーンが何回かあった。
だけど同情する部分も描かれていて、そのバランスがうまい。

例えば最初のシーン。
エイリアンの卵を焼く時「赤ん坊がはじける音だ」とニヤニヤ笑っているところ。
凶暴な下級エイリアンにも、命がけで許可を得なければならないのは同情する。
が、後のクリストファーへの対応も重ねて見ると、同じ人間を強権で蹂躙しているような不快感をもつ。子供を人質にとったりね。

クリス宅地下に匿われた時も、見下しておいて「お前を治せる」と聞いてからの手のひら返しが、ほんと呆れる。
が、どんどんエイリアン化していく事には同情。
元の姿に戻り、妻の元へ帰りたいという気持ちが、指をぶった切るほど強いことも。
その後ギャングのとこへ単身乗り込み「勇気あるじゃんか」、MNUに強襲かける時には少し応援している自分がいる。

しかし司令船発射のいざこざでクリスと意見が割れ、騙し討ち。
ひとりだけ逃げた事で株は大暴落。
クリスは捕まるし、司令船には対空ミサイルが刺さって撃沈。
クリスの絶望した顔!
あーあ、ほんとだよ……。

絶体絶命のヴィカス、クリス、子供。
しかし子供がプログラムを操作、母船の誘導で帰還しようとする。

「宇宙船に何が起きてる!?」兵士はクリスを殴り尋問。
だが彼は子供を守るため口をつぐみ、暴力に耐える。
パワードスーツに身を包んだヴィカスは、助けると思いきや逃亡。
「やっぱりこいつは……」こちらが失望しかけたその時、立ち止まる。
「口を割りません」「では殺せ」「では殺せ」兵の命令が繰り返し響く。

クリスの死が迫った瞬間、ヴィカス発砲。兵を撃つ。
ヴィカスの中で、エイリアンと人の垣根が取り外された瞬間。
身を挺し、吹き飛ばされ、破損しながらもクリスと司令船を守る。

物語は変化を描くものだというが、最初利己的でエイリアンに対してあの態度だっただけに、理解が通じ、自己を犠牲にしてまでも親子を守ろうとする描写に感動する。
お手本のようだと思った。


でも思い返すたびに涙が出るのは、最後のバラを作るシーンなんだよね。
エイリアンになって、人間だった頃の何もかもを失ったけれど、奥さんのことは本当に愛してたんだなあって。
そのひたむきさに感動するのかなあ……
今これ書いてても泣けてきたからなあ、そろそろやめよう。


関連




2015-09-19

ドラマ『ベター・コール・ソウル』S1★5

Netflixで視聴可。
『ブレイキング・バッド』のスピンオフで、悪徳弁護士ソウル・グッドマンを主役にした物語。
シーズン1を見てきた。

意外なことに、ソウルはまだ「ソウル」と名乗ってはおらず、本名のジミー・マッギルで弁護士稼業。
髪はぺたんこ、くたびれスーツ、依頼の電話はゼロ、貧乏である。
公選弁護人として金を得、ネイルサロンの裏にある、小さな倉庫のような事務所で依頼が来るのを待つ毎日。
ここからどうやって彼が「ソウル・グッドマン」へと変わるのか!

※以下、ネタバレあり!

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ラストシーンの意味

非常に大きな訴訟となるであろう案件を持ってきたのに、雇用を認められなかったジミー。ところがキムとハワードの尽力もあって、協力事務所のパートナーへ、という話がくる。
「11時、裁判所に事務所の人がくるから、挨拶をしたら?」とキム。
やっとジミーの努力が報われた……はずが、彼は挨拶せず裁判所を出る。

ふと、横領夫婦のバッグを盗んだ時のことを思い出し、駐車場の管理人マイクと会話。
「160万ドルの金が、誰にも知られず俺の机にあったんだ。80万ずつ分けてもよかったのに、なぜそうしなかった?」
「“正しいこと”をしてると言ってたぞ。なぜ俺が盗まなかったか知りたいか?」
「ああ」
「依頼通りに仕事をした。それだけだ」
「あの時俺を止めたものはもう二度と――俺を止められない」

急展開のラスト。
ジミーにとっていい話でしかなかったのに、なぜ蹴ったのか?

帰る前にマルコの形見の指輪を触っているし、やはりマルコの死が影響を与えたのかなー。
マルコは死ぬ間際、ジミーと一緒に昔よくやってた詐欺をやりたがった。
それは、ジミーの詐欺の才能を「本物」だと思ってたからだし、マルコにとって「特別なこと」だったから。

兄に諭されて足を洗ったけれど、「自分の本分はこっちだ」と気づいたんじゃなかろうか。
ハワードの物真似をし、キムに言われた「あなたらしさ」の答えがここにあるのだと思う。

パートナーの話を受ければ、兄の言うがまま「良識のある自分」を取り繕って生きる事になる。
それに、高齢者専門の弁護も最初やる気なさそうだったし、やりたい事と違うのかもしれない。
彼は軌道に乗りかけた偽の人生よりも、自分に正直に生きる事を選んだ。

「何が“正しいこと”だよ、俺は金が好きだし、あれは盗んでもバレない金だったじゃないか。何やってんだよ俺は!」
マイクに喋りかけた時、そういう心境だったのかも。

するとマイクが
「俺が盗まなかった理由。依頼通りに仕事をした。それだけ」

これを受けてジミー、
「あの時俺を止めたものはもう二度と、俺を止められない」

良識や正義と決別し、マイクの言う「依頼通りに仕事をする」人間へと変わっていく。
ソウル・グッドマン、金さえ払えば善悪関係なく依頼を受ける弁護士に。

……こう考えると、ソウル・グッドマンへの軌跡が見えるようなS1ラストだった。
個人的にはここで終わっても納得いく。
まあチャックの事が解決してないし、もっと見たいけど!
S2でキム落胆してるかなあ……。

あと、5話で人形を譲りたいお婆さんの遺言書を作ってる時、ジミーが
「弁護士の半分はバカ、あとはペテン師」
って皮肉を言うんだけど、伏線だったのかもしれない。
ペテン弁護士になっちゃったもんなあ。

チャックの電磁波アレルギー

ジミーの兄で、超頭が切れるけど今は外に出られない。
電磁波アレルギーと言ってたが、入院回で心因性の症状と判明。
どうも弟との関連で感じるストレスが原因っぽいよなあ。

良くなったのって、介護施設のシュレッダーパズルで証拠獲得、相手の弁護士と話し合って勝てそうだと思った時か。
話し合いの最後からチャックは喋りだして、自信を回復していってる。
弟が真面目に取り組む姿に安堵したのか、長く復帰できないでいる自分の不安が解消されたのか……外に出ても平気になった時は本当に嬉しかったんだけど。
その後の、弟にした仕打ちが酷すぎて。

「本物の弁護士じゃない」
自分は人生を捧げ勉学に励み研鑽を積み、法の何たるかを知ってきたが、弟は通信教育で学び、商売としか考えていない。そんな男を、自分の事務所に入れるわけにはいかない。
そういう気持ちの吐露があり、兄弟は決別。

なるほど、だからジミーのでっかい広告にもショックを受けてたし、公選弁護人として経験を積めと言ってたのか。
養護施設でのビンゴ大会……はまだいいかもしらんが、ケトルマン妻への当たり屋計画を知ったら、兄ちゃんショック死しそう。

でも集団訴訟の件に関しては、ジミーはほんとに頑張ってた。
もしかしたらこの件をきっかけに、変われるかもしれなかったのに。
それに毎日買い出しに行って、兄の世話をしてきたのもジミーだ。
自分とこで雇うのが嫌なら、キムがやったように別事務所紹介するとかさ……それも嫌だったのかなー…。

しかしわざわざハワードを悪役にしているところを見ると、チャックは良い兄に見られたいという思いはあるようだ。
法が関わることについて弟を許せないが、弟を愛してもいる。
この葛藤が、チャックの症状を重くしているのかもしれない。

2年前からだったっけ、症状が出たのは?
もしかしたら、弟が司法試験に合格した事がきっかけになってるのかもなあ。


ソウル・グッドマンのその後

視聴中は気づかなかったんだけど、1話冒頭のモノクロシーンは彼なんだって。
シナボンロールの店長かあ……。
『ブレイキング・バッド』でソウルが言ってたらしいね。

昔のCMを眺めたり、追手にビビったりしてたなあ。
なんかこう、背筋を丸めて生きてる感じが、とても切ない。


マイク

マイクがメインの6話だけ、シリーズの中では異質だ。
彼が息子を亡くした経緯や、それに関わる事件が描かれる。
『ブレイキング・バッドで』感情移入できるキャラがジェシーとマイクだったんだよね。
だから彼の人となりがわかる話で、感動した。
1話で描ききってるからすごいなあ。

ナチョと取引する男の用心棒になった時、男に「深入りするな」と忠告するシーンもあった。
ウォルターを思い出す。
彼は深入りしまくっちゃったから……。

マイクはまだガスと出会ってなさそうだ。
これからその出会いも描かれるのだろうか。
一気に危険度上がりそう。

関連




Chromecastきたー

同梱のHDML延長コードをつけてます。
楽天セールで半額だったんで買ったった!
今月末に新verが来るという噂があって、それで安いのかな?

Chromecastというのは、テレビのHDML端子につなぐと、いつもスマホで見てる配信がテレビで見られるアイテム。
Chromecast - Google

配信見るためにわざわざPCつけるのめんどい、けどスマホ画面は小さいし、小さいから画面前に張り付いとかないかんし、その間スマホいじれないし……って、ちょっと不便だったとこが解決した!


対応アプリならワンタップ

Twitchアプリ。
右上にCastボタンが出てくる。
私が使ってる動画アプリは、Hulu、Netflix、Youtube、Twitch、Gyao、ニコニコ、楽天ShowTime、かな。
で、そのうちニコ以外のアプリはChromecastに対応してるので、Castボタンをワンタップしたら後はスマホ画面消してもいいし、Twitter見たり別の作業しててもよし。

今んとこ対応してないニコは、スマホ画面自体をキャストしてテレビに映すしかないのかなー(Chromecastアプリで可)。
でもこれだとスマホで別作業ができないから、対応してくれたら嬉しいなあ。


シンプルイズベスト

同梱品は2つ。

  • HDML延長コード
  • 電源コード(電源はUSBか、コンセントで取れるようになってる)

電源コードを束ねてあるのがマジックテープになってて、再利用できる。
目立たない所だけど便利。考えられてるなあ。

あと設定も超シンプルで驚いた。
スマホにChromecastのアプリを入れて、Wifi勝手に検知してくれるんで、パス入れるだけ。
機械の設定とか全部こんなんだったらいいのにな〜。楽ちん。




ってわけで、Twitchのマリオメーカーやら格ゲーを映して、家族に「こういうゲームの配信をよく見てるんだ」って教えたり、洋ドラや映画を一緒に見たり。
生活スタイルにも影響が出つつあります。

そういえば楽天動画の無料券もついてたんだ。
ホントいい買い物だった。
『フォックスキャッチャー』観よかな〜。

2015-09-05

近況

鹿児島散策

彼氏がこっちに遊びに来るってことで、一緒にあちこち散策してきました。
寸前で私の腰痛が再発したり、桜島の大噴火が危惧されたり、強い台風が襲来したりと、いろいろありましたが何とかすべて収まって。

維新ふるさと館なんて初めて行ったけど、意外と面白かったなあ。
特に西郷どんの義妹のインタビューと、幕末~新政府樹立~西南戦争の人形劇が良かった。

温泉にもふらっと寄りました。
思いつきで行った割にのんびりできたから、また行きたいな~。

アミュプラザの観覧車にも初めて乗車。
ヤバイ怖さだった……。
おかしいな、子供の頃はそうでもなかったと思うんだが。
最初は全面透明のゴンドラに乗るつもりで、エアコン壊れてるからやめたんだけど乗らなくてよかった……。
彼氏はめっちゃ面白がって揺らしてきおった……。
くっ……!

そんで同じ階のゲーセンでエアホッケー対決もした!
ダブルスコアで負けた!
くううっ……!

鹿児島グルメも色々食べました。
黒豚しゃぶしゃぶ、きびなご、ラーメン、鳥刺し、焼き芋やお芋のタルト、かるかん、かすたどん、がじゃ豆……は私が好きで買っただけですが。
最初の日は母がつくった鶏飯をみんなで一緒に食べたんだけど、前から知り合いだっけなってくらい不思議とうちに馴染んでた。おもしろ。

またしばしお別れ。


漫画のショートストーリー

のコツを掴みたくて、落語にも手を伸ばしたら感動するやら感心するやら、面白かった。
今のところは『百年目』『笠碁』『井戸の茶碗』が好きかなあ。
『さくらんぼ(頭山)』『お菊の皿』『悋気の火の玉』もあらすじが好きなので、また聴いてみよう。

最近社会の狭量さに辟易することがあって、そんな時だったせいか人間のダメさを許容し受け入れていく、落語という文化に感動した。
人間的な深みの標になってるというか。
こういった文化が受け継がれていることが、ほんとに素晴らしいなーと感じる。

いまはブレイク・スナイダーの『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術』を読んでまとめてるとこ。
これは映画のシナリオについてなんだけど、ショートストーリーにもどうにか生かしたいなあ。


動画配信

最近は格ゲー配信もちょいちょい見てて。
闘神激突はすごく面白いイベントだったな~!
SF5配信も長時間だったけどダラダラ見てしまった。
ワイワイみんなで格ゲーしてる配信はやはり楽しい。
ケン見てみたいなー。

映画・ドラマ配信ではNetflixってサービスが始まったらしく。
バットマン・ダークナイト見たよ。
ジョーカーの演技素晴らしかった。
観ていた時は感動は少なかったのだけど(感情を持つ隙をあまり与えてくれない映画だった)、構成を見るとこれまた素晴らしく。
あとから人物の心情や背景を考えてしまう映画だった。ライジングも見たい。

ベター・コール・ソウル、ナルコス、デアデビルも評判よくて気になる。
今月は物語月間になりそうだ。

2015-08-24

『謎の蔵書票』ロス・キング ★3

謎の蔵書票

本をめぐるミステリーという内容に興味をひかれて、10年前くらいに読んだ本。
当時は蔵書票のことをよく知らなくて、小学校の図書室の本に挟んであった貸し出しカードみたいなものかと思っていた。
退屈な部分もあり、面白く読めた部分もあり。
三十年戦争や蔵書の歴史を軸に話が進むのでそちらに関心がある方にもいいかも。

舞台は王政復古後のロンドン。
王につくか革命派につくかで命運が別れ、荒廃した館が印象的だった。
いま清教徒革命に関心があるので、読み直したら色んな発見があるかもしれない。

また、数年後に季刊『銀花』で蔵書票の紹介を読み、「なるほどこれが蔵書票か!」と把握。
色んなデザインやインク、紙質があってとても興味深かった。
こちらはこちらでまた深い世界なんだろうなあ。


この本が好きな方には以下もおすすめ。


ジョン・ダニング 『死の蔵書』
これはほんとにミステリって感じで読める。
死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マシュー・バトルズ 『図書館の興亡』
図書館の歴史。
図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで

ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
中世ヨーロッパのカトリック修道院を舞台にしたミステリ。
ミステリであり膨大な知の詰まった文学。
薔薇の名前〈上〉

2015-08-20

『アウル・クリーク橋でのできごと』ビアス ★3


こちらで読んだ:ghostbuster's book web.


※以下ネタバレあり。




感想

走馬灯、というにはあまりに圧倒的で、壮大。
クローズアップして描かれる自然や人物たち、感触や香りの描写。
ファーカーはまさにそこで生きている。

読みおわってすぐは、もう一度読みなおして、現実ではどうなっているかを想像したりもしたのだが(睡眠時、外の音が夢の内容に影響するというのを思い出した)、そういう仕掛けだけを目的に読むものではない気がした。

その一瞬にこれだけ壮大なものが詰まっているということに、意味があるような気がする。
死が見せる圧倒的な夢と、あまりにあっけない現実の一瞬。

2015-08-19

『月明かりの道』ビアス ★3

こちらで読んだ:ghostbuster's book web.


芥川龍之介『藪の中』に影響を与えた作品のひとつということで読んでみた。
ある屋敷で起きた殺人事件について、3者3様の視点で描く。


まずは息子が語る、事件のあらまし。
母親が寝室で殺され、父親が憂鬱に取り憑かれてしまったこと。
その後、夜道を歩いていた時に、父親が何かを見て驚愕し、そして姿を消したこと。

次に、囚人のように日々悔恨のうちに暮らす男の語り。
ネタバレ:彼はかつての父親で、妻を絞殺したこと、月明かりの道で死んだはずの妻を見、恐怖に慄いて生活を捨てたことを告白する。

最後に、霊媒師によって呼び出された被害者本人。
この世界の孤独を嘆き、ある夜の出来事を語る。


普通の生者3人にしないところが面白い。
最初に家から出てきた男は誰だったのか?という謎は残るものの、3人の語りを合わせて事件の全容を理解させ、理解させる事で皮肉と悲哀を引き出す、というつくりだから、そこは『藪の中』と趣旨が全く違う。


2章の男の言葉は遺書だ。
そして3章で母親は
「まもなく息子も見えない者の世界に移ってくるでしょう」
「そうしてわたしは永遠に会えなくなってしまうのでしょう」
と言うから、語り手3人とも、孤独のまま終わってしまうのだろうなあ。

2015-08-11

『平行植物』レオーニ ★3

平行植物 (ちくま文庫)

あの有名な『スイミー』の作家さん。

まず前置きからして、専門的かつ深遠なことを言っているようで、まるで中身がないからすごい。
皮肉じゃない。褒めてる。
というか、それがこの本の素晴らしい所なのだ。

扱うのが実体がない「平行植物」ゆえに、前置きもそれに倣ってるのだろうか。

例えばこんな感じ:
(羊を生んだ植物の例)
あるいはまた、正真正銘の科学的実験の時代が始まろうとしていた17世紀に、クロード・デュレも動物を生んだ木について語っている、というふたつの事実を考えあわせてみれば、自然界のいかなる既知の法則にも拘束されない植物が発見されたことによって、必ずしも客観的正確さをもってそれらの新しい植物の本質を扱わない記述が現れたとしても不思議ではない

簡単に言うと「この本は空想の植物について書いてるから、主観的だし想像を大いに羽ばたかせてるけど、その辺よろしくー」ということらしいが、周りくどさ半端なくてこんなん笑っちゃうよ。

植物の分類の話かと思ったら碁の対局に通信料がいくらかかったとか、地層の発見話に、怪しげな透視術を使う巫女がどうのこうのとか、ふざけた話が当然のようにまぎれこんでるのも面白い。


興味を引いたのは「中身」をふたつ持つという、カラツボ(絵)
煙突みたいな形で、カラツボの中身は空洞になっている。
そして、その空洞はまわりの空間とつながっている。
空間がカラツボの身を包んでいるから、カラツボの身もまた「中身」なのだ。
中身が中身を包んでいる。
(という風に読み取った。間違ってるかもしれない)


むかし荒俣宏『理科系の文化誌』、サン=テグジュペリ『人間の土地』、手塚治虫『三つ目がとおる』のボルボックなどから影響を受けて、生き方が人や動物と全く違う「植物」というものを私はある種のエイリアンだと思っているのだが、カラパイアを読んでると「やはり……」と感じてしまう。


実体のある植物でもこれだけのヘンテコさを備えているので、「平行植物」にはより大きなヘンテコさと、壮大さと、もっともらしさを望んでしまうのも正直な気持ちだ。
願わくば、「平行植物」と「非平行植物」の境界がより曖昧で、面白い世界にならんことを!

2015-08-08

『藪の中』芥川龍之介 ★5

藪の中

あらすじ

藪の中で男の死体が発見される。
捕らえられた盗人は殺しを自供、事件が明らかにされてゆく。
ところが現場から逃げた男の妻、そして殺されて幽霊となった男、2人もまた自分が殺した(自殺した)と語り、一転、事件は混沌の中に。
真相はいまだ解かれていないという。 >Wikipedia



感想

ミステリーじゃんかーー!
食い違う3人の証言、誰の話をどう信じるかによって事件が変わっていくので、犯人がわからないらしい。「真相は藪の中」という言い方もこの作品が元ネタだとか。
すごい影響だ。

私も好奇心から真相解明に取り組んでみたが、納得いく説ができず諦めた。
「こうだとしたら……いや、こうも考えられる」と派生が次々出てくるので何も確定しない。

いくつか真相解明サイトも見たが、別の可能性を無視している、嘘かもしれない話を断定していて、やっぱり納得するまでいかなかった。
結局はたくさんの「こうかもしれない」「ああかもしれない」の中で、「どれが自分にとって信じやすいか」という話に落ち着いてしまう。
よくここまで錯綜するような物語が書けるなあと、逆に感心してしまった。


誰を信じるとどう見える

そんな中で面白かったのが、和田敦彦「『藪の中』論の方法」(PDF)
読む中でどんなバイアス(偏り)がかかるのか、話し方の変化など、すごく勉強になった。
ためしに私も3人それぞれを信じきって読んだら、人物の印象がこんな風に変化した。


A. 盗人を信じた場合
盗人:
襲った女に心奪われ、夫と正々堂々決闘するも、女に逃げられる。
彼が太刀で縄を切れば一筋にならない、という意見を見たが、一本だけ束から離れて切りやすい縛り方になってたかもしらんし、女がなびいてるとあって、ちょいと切込みを入れて「あとは自力で解け」なんて偉ぶった態度を取ったのかもしれない。

女:
「どちらか死んで」と言って夫を助けなかった事を懺悔している。
この言葉は本心かもしれないし、決闘させれば夫が勝つと思ったのかもしれない。
が、怖かったのか途中で逃げてしまい、事が終わった後戻ると(馬が残っていたのでたぶん近くに隠れてた)夫は死んでいる。
自責の念から「自分が殺した」と語る。
しかし、その割には「夫は私を蔑んだ」と同情を引き、「殺しても仕方がなかった」説に持ち込むのだった。寺なら死刑にもならんだろうし、懺悔ごっこで罪悪感から解放されたいだけかも。

夫:
「どちらか死んで」と自分を裏切った妻に激怒する男。
その怒り、恨みで事実をねじ曲げ妻を悪女に仕立てる。
自害としたのは、盗人風情に、あるいは腕に覚えがあっただけに、敗れて恥と感じたか、または悲しみに沈む自分に同情を集めようとしたのか。


B. 女を信じた場合
女:
盗人に強姦され夫からは軽蔑され、恥を見られた為に彼を殺さねばならなかった、哀れな女。

盗人:
言うことがいちいち芝居がかっている。
強姦したあげく、自分の見栄のために平気で嘘をつく。
「いやあ、俺はさっさとズラかりたかったけど、女にこう言われちゃさ~」
罪をかぶったのは、盗人の自分に向くであろう疑いを潔く肯定した上で「決闘だった」と主張し、死刑を免れるためか。
夫が死んだこと、縄が切れた位置など知っていたのは放免か誰かから聞いたか、現場に戻ったか。

夫:
強姦された妻を軽蔑。
屈辱を味わい、「殺せ」と言い放って死を選んだ。
その恨み激しく、女を悪女に仕立て上げる。
つい迸ったものかもしれないが、盗人を許すという言葉が出るほど。
あるいは罪の追求を妻に絞りたかったのかもしれない。
自害としたのは、妻に罪は着せまいと最後の思いやりが顔を出したのか(でもそれだったら誰か小刀抜いたって言わなくていいか)、それとも妻が許しを請うような機会さえ与えたくなかったか。


C. 夫を信じた場合
夫:
盗人に心変わりした妻に死を望まれ、屈辱と悲哀のうちに自害。

盗人:
「B. 盗人」の印象とだいたい一緒。
妻の言った「夫を殺して」には引いたはずだが、彼女に好意的な話をするのは、執心していた時の名残か。
または自分の創作話に大いに酔うため、事実を無視したか。

妻:
「A. 女」と近い。
ただし言葉は「夫を殺して」、完全に盗人に乗り換えている。
自己保身からか、隠し事が多すぎる。
もし小刀を抜いたのが彼女なら、自殺をしようと考えたのか、そのフリをしようとしたか、盗人に罪をなすりつけるためか、または消極的な形で夫を殺したかったのかもしれない(下記参照)。

とりあえず陳述をまるっと信じてどう感じたか、を書いてみたが、話の一部を嘘だと思う、、勘違いがあると思う、3人とも嘘をついてると思う、3人とも語ってない出来事があると思う、といったパターンではまた印象が変わるんだろう。


夫を殺したい

論の中にはほかにも、妻が罪をかぶった理由に
「夫を裏切った自分を悔やんで、自分を消してしまいたいと考える」
→「夫を消せば、彼の中の“裏切った自分”も消えるだろう」
→「創作話の中で夫を殺す」
というものがあり、興味深かった。(五、参照)

この心理、この作品にも出てくる「恥を見た人が生きていてもらっては困る」に似ている。

もうひとつ面白かった論文、渡辺義愛「『藪の中』の比較文学的考察」(PDF)には、『藪の中』に影響を与えた海外作品について論じているが、そのひとつ『ポンチュー伯の娘』(PDF)にこういう話がある。

(夫のチボー、盗賊と戦うが数に負け、縛られる。妻が犯された後……)
「奥よ、どうか私の縛めを解いてもらいたい。棘がひどく痛いから。」
地面にころがっている剣が奥方の目に入ったが、それは殺された賊のものであった。
それをつかみ、チボー殿の所に行って言った、「殿様、自由にして差し上げますことに。」
彼女は相手の胴体を突き刺そうと思った。
だが彼は切先が自分に向って迫るのを見てそれを恐れ、腕と背が捩れるように、懸命に身を逸らせた。彼女は打ち掛ったが、相手の腕を掠り、革帯を断ち切ったのだった。
彼は今や両手が自由になったのを感じ、体を這わせて縛めを解いた。
両足で立ち上って言った、「奥、もうお前には殺されまいぞ。」
彼女も言った。「いかにも殿様、それが口惜しうございます。」

『藪の中』夫の話のように、妻が殺そうとするのだ。
論文によると、このシーンも解釈がいろいろあるそうだが、大方の見方は

夫が生き残ることによって、絶えず屈辱が思い出されるであろうから、生証人を抹殺してしまおう p30

らしい。
『藪の中』の恥を見られた女の心理とはちょっと違うかなあ。
思い出すから殺すんじゃなく、恥自体を即消去したいというか。
男たちの記憶が消せれば一番いいのだろうが、ないゆえ殺さなければならない。
(もしくは自分が死ぬか)

さらには、こういった解釈もあるという。

(この民間説話の背景となる)原初的な社会では、妻はたとえ暴力で犯された場合も、穢れについて責任を問われた。この物語のみなもとにあるのは、(略)懲罰、あるいはすくなくともこうむりうる軽蔑を未然に防ごうとする気持であろう。 p31

これを読んでからだと、妻・真砂まさごの懺悔がまた違った風に感じられる。
夫に軽蔑された話が大部分を占めていたけど、なによりもそれを恐れていたせいだったのかな。
夫が軽蔑してなくても、そう思い込んだかもしれない。
または軽蔑を恐れて「どちらか死んで!」「夫を殺して!」と口走ったなら、そのせいで夫の怒りを買うことになったのだから、なんとも……皮肉な話である。



関連



2015-08-05

『不思議な島』芥川龍之介 ★3

青空文庫

ガリヴァー旅行記が登場するので風刺作品なんだろうなあ。
『沼地』と似てる。

  • サッサンラップ島(SUSSANRAP)
    逆から読んでパルナッソス
    文芸の発祥地とされる。
  • バッブラッブベエダ(BABRABBADA)
    よくわからぬ。
    アブラカダブラと聖典ベーダを合わせたような。
  • 野菜=本
  • 片輪=評論家
    片輪は野菜が作れない(評論家は本が書けない)。
    何もわかってないやつが本の良し悪しを決める、という皮肉か。
    感覚が不自由になればなるほどArbiter elegantiarum(通人)になるという。
    本について感じたことが世間一般とかけ離れるほど、「人と違う捉え方」ってことで評論家としては評判になる。そのためにわざわざ感覚を歪ませる者もいる、と滑稽さを笑っている?
  • Arbiter elegantiarum
    Weblio辞典 judge of elegance
    ネロの側近ペトロニウスについての「典雅の審判者」という記述が元らしい。
  • 大学の講義
    古めかしく今についてきていない、ということか。
  • カメレオン
    カメレオンというと色変わり……ころころ変わる流行、世相のことか?
    信託を聞いてから=市場で何が売れるか動向を見てから、という意味だろうか。

日の出温泉と嘉例川駅

日の出温泉 きのこの里

家族で温泉行った!空港の近くにあるところ。 nifty温泉




▼自撮りするとも思わず
ヨレヨレのTシャツを着ていますがわたくしです。
暑かった~。

川沿いの温泉で、開放感あり。
窓が大きいので内湯からも緑が見えた。

お湯は鉄のようなニオイで、「ぬる湯」「あつ湯」に分かれている。
ミネラルがたっぷり入ってそうな濁り湯。
露天はウッドデッキが敷かれていて、そこにベンチとバスタブの水風呂がデン!と嵌まり、ちょっと面白い。

200円で入れるせいか、地元の人や通りがかりの人などひっきりなしだった。
小さい温泉なのですぐに満杯になる。

休憩室はひとり400円。
しばらく寝たり、お菓子食べたり、のんびり過ごすにはとても良いところだった。




嘉例川駅

その後、明治36年開業当初の木造駅舎が残ってるという、嘉例川かれいがわ駅に寄り道。
レトロなものが好きなので行ってみたのだが、人っ子一人いなくて結構怖かった……!
SIRENに出てきそうな感じで。

▲母がちらり。






駅舎内で配布されていたプリント。スタンプも押してきた!



2015-08-04

『十円札』芥川龍之介 ★5


いい話だなあ。

金欠の主人公は、尊敬する人、粟野あわのさんからお金を借りることになった。
だけど、彼の信用を失いたくない、自分の威厳を守りたい。
そのためには、十円札をとっておいて、早く返すのが一番だ。
街には誘惑が待っているが、主人公は使わずにいられるだろうか……という話。

借りないとせっかくの好意を無下にしてしまう。
返さないと相手の信用が落ちてしまう。
形に現れないもののやりとりを、お金を介してやっている。
『贈与論』を身近な物語として見ているようだった。

後半十円札をしげしげと見、それは細やかな印刷の入った紙、美術的に見れば額に入れてもいいかも――、ものを多角的に見せるのも面白い。
楽書らくがきをする紙、信用の媒介をする紙、窮乏の悩みの種、もしかしたら悲劇を起こした事もあるかもしれない、と。

読後感も爽やかで、素晴らしい作品だった。

芥川さんの作品は、『地獄変』『羅生門』といった陰のものより、こういう愛嬌が見えるものの方が好きみたいだ。


メモ

  • ヤスケニシヨウカ → 弥助にしようか
    弥助=寿司のことだそうだ。語源由来辞典

『眼球譚 太陽肛門/供犠/松毬の眼』バタイユ ★3

眼球譚 太陽肛門/供犠/松毬の眼 (ジョルジュ・バタイユ著作集)

2011/06/28

巷で「エログロ小説」と言われていて気になっていた本書。
どれだけ眼に憑かれているかを語る、フェチズム的な本なのかな?と思いながら読んだ。
以下twitterより。



p60まで読んだ。
もっと耽美な、もしくは濃厚なエロシーンが羅列してあるかと思えばそうでもない。
自慰の見せ合いや精液、尿のかけっこ。
オーガズムのない遊びがずっと続く感覚。
グロもまだ無いが、「卵を落す」が「目玉を落す」になったのが予兆かも。
しかし小便は臭いし、後始末が大変そうだ。



読み終わった。
エログロというより冒涜小説の印象。
この小説が書かれた時代、キリスト教の倫理観が今よりはまだ生きていた時代には、まさにエログロだったのかもしれない。
目玉をくり抜いたあと、まさか眼窩姦を…?と思ったがそれは無かった(なんとなくなりそうな気がした)。
シモーヌは穴より目玉に憑かれていたので、眼窩には興味がないのかな。


闘牛の描写:
白色や、バラや、薄ねずみ色の、穢らわしい色彩の臓物の束を足の間から漏らすとき。張り裂けた膀胱が突如、砂の上に馬の小便の水溜りをぶちまけるとき…
について、張り裂けぶちまけられるのは臓物じゃないのか、と意外に思う。
散々小便について描いてきて、ここにきてもまた尿なのだ。
飛び散る血のイメージを省略して、この激しさを小便に託すというのは、いかに小便に対して強迫観念があるかというか…、小便じゃないとだめなんだろうなあ。


私は見たのだ、シモーヌの毛むくじゃらの陰門の中に、マルセルの薄青色の眼が小便の涙を垂らしながら私を見つめているのを
のラストには脱帽。
これはシモーヌがくり抜かれた聖職者の目玉を自分の中に入れてしまうという描写だが、フロイトやシンボルについての記事で読んだ女性の陰門への恐怖、「あそこはなんでも飲み込むブラックホール」というのが頭に浮かんだ。
こっちは飲み込むんじゃなく、見つめるアソコである。
しかも小便の涙を流して!
うーん、半端ない。

最後の章「回想」で、なぜこういうものを書くに至ったかの経緯説明があるのだけど、むしろこの章を主人公とシモーヌの背景として描かなかったのはなぜなんだろうか。
物語描写から離れたところで書く事が必要だったのか?
本編を、作者の白昼夢のようなものとして書きたかったのかなあ。
この章はまだ途中までしか読んでない。


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