2012-08-23

ジェフリー・ディーヴァー 『12番目のカード』

12番目のカード

リンカーン・ライムシリーズ 6作目。

あらすじ

ハーレムの高校に通う16歳の少女ジェニーヴァが暴漢に襲われる。
現場にはレイプパックとタロットカード「吊された男」。
強姦未遂事件として捜査を始めたライムとサックスだったが、
執拗につけ狙う犯人を前に、なにか別の動機があると気づく。
それは米国憲法成立の根底を揺るがす140年前の陰謀に結びつくものだった。


※以下ネタバレあり

見所

ライムの決断。望み薄な回復可能性にかけて、今後もリハビリを続けるか否か。
セリットーのトラウマとの葛藤。
歴史を絡めた展開。


感想

プロットがえらい凝ってる。
メインのジェニーヴァが狙われる事件、140年前の歴史的背景を持つ事件、
登場人物の葛藤、少女の私生活など謎がいくつも登場し、
意外な展開が重なり、最後はすべて解決。読後感は良い。

ただそういった謎が多い分解消にも紙幅を取られていて、
「こいつは強敵になりそうだ!」と思った人物が意外と早い退場。
追い詰められる感じが物足りなかった。
もっとライム達をかき回してくれるかと期待してたんだが。

さらには、危機迫るたびに都合よく助かるので、
「今度もどうせ助かるんだろう」という意識が芽生えてしまったのも残念。
本来なら犯人との対峙や襲撃でスリルを味わいたかったんだが、
一番ビビったのは誤射のシーンだった。

ジェニーヴァにもあまり肩入れできなかったしなあ…良い子なんだけども。
機転の利く子なのに「命狙われてるのわかってるのか?」というシーンが何度もあるので、
しまいに私の心は「もうどうなってもしらんぞ」モードに入ってしまった。
そんな中でもベル達は護衛を続けなくちゃいけないんだが。

不満点ばかり書いてしまったが、
「もしかしてこうか…!?」「これ、実はこうだったのか…!」的なプロットの妙はさすが。
ページを進める原動力になったし、おなじみの登場人物2人に試練が課され、
克服する過程もファンなら見どころなのでは。

キャラクター造形も面白かったし、憲法修正第十四条の話も興味深かった。
政治系ミステリもまた読んでみたいところ。

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