2013-03-21

『贈与論』マルセル・モース

贈与論 (ちくま学芸文庫)

バタイユきっかけで。
まずはじめに単純な物々交換の話じゃないんだよ、と釘を刺される。

興味深かったのは以下の点。

私たちの社会では区別がついている事象が混ざり合っている社会

  • 取り上げられている社会では、
    法、呪術的な意味、物の価値、他の族との交流、物資の流通、地位や名誉の保持・更新…
    私たちが区別をつけている色々なものが混ざり合っている。
  • 人・物・魂の混ざり合い →古いローマ法の売買について
  • 贈り物の拒否が盗みと混同される(p52) →受け取る義務

物に宿る精霊・魂

  • 私は物を失くした時、「あーどっか遊びに出かけたのか」と思うことがある。
    そういう感覚の意識下の部分は、これと繋がってるような気もする。
    意識上の理由は喪失感の埋め合わせと、そういう世界の方が面白いからというものだが。
  • 物を与えることは自分の一部を与えることでもある。
    だから物には還るべきところができるし、もらった側は返さねばならない。
    他人の魂に由来する物を持ち続けると自分を蝕む (p37)。
    → 贈り物は毒でもある
  • 赤い糸じゃないが、贈り主と品物との間にはそういう繋がりがあって、離れない。
    だからもらった側はそれを断ち切る儀式を行う(p262)
    これも感覚的にわかる気がする。
  • 自分の領地に生えているのに、その木を切る際神々に対価を払うトラジア族。
    上と似てる。神々の物を自分の物にする手続きなんだと思う。
    父が窯焚きをする前に、安全祈願で窯の上に塩や酒を供えることがあるのだが、あれはかまどの神様に「火を操る術を自分にも分けてください」という手続きとしての意味も含まれてるんじゃないだろうか。

富の循環

  • サモアのオロア(父方の財)とトンガ(母方の財)
    子供はトンガである。
    里子に出すことで、オロアとトンガを相伝的に交換する体系。
    (注釈と合わせて考えると意味がよくわからなくなった。解説がほしい)
  • トロブリアンド諸島の宝、ヴァイグアの循環
    日本だと神輿の持ち回りとかでこういうのありそうだ。

権力の保持・更新

  • ポトラッチ: 富をどれだけ破壊できるか競争する(供犠の意味もある)
  • 返礼の義務がある中、どれだけ威厳をもって贈り物を受け取れるか

ゲルマン法

  • 贈与・受領・返礼の義務が垣間見える伝承
    (招待されなかった人々の呪詛、招待された人々の謝意・気前のよさ)
    眠り姫の童話を思い出す。
  • 物の拘束(ネクスム)
    契約の際、担保として価値の低いものを売り手に渡す(手袋、一枚の貨幣、ナイフなど)。
    これらは自分の個性が染み込んだものであり、相手の手中にある限り拘束される。
    契約履行は自分を取り戻すこと。
    また、受け取る側も縛られるため、まず地面に投げつけるなど警戒する。

贈与が他者との信頼関係の持続に繋がり、協同関係が生まれるという最後の話も面白かった。社会の根幹に贈与が根を下ろしているのだなーと。

最初は読みにくい本だと思ったが、何回か読み返して線を引いていくうちに慣れてきた。誤字がいくつかあってそこは残念。でも読むたびに発見がある面白い本だと思う。


ここの「感情の贈与」も面白い内容:
精読会初参加: 『たのしいムーミン一家』を『贈与論』の観点から読む

『レヴィ=ストロース入門』 p138 プリコラージュ

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