2013-03-18

『キエサルヒマの終端―魔術士オーフェンはぐれ旅』

魔術士オーフェンはぐれ旅 キエサルヒマの終端
新シリーズその1。
以下ネタバレあり。


うーん、やばいなあ。
熱中して読み耽ってしまった。

最終回の後日談とのことだけど、この本がほんとに最終巻って感じだ。
そして、新しいスタートでもある。

大陸から結界が消えたおかげで、大陸外へ船出するという新たな着想を得た人間たち。
魔王の力の制御・返却を望むオーフェンや反逆者となった改革派の死の教師たち、無謀編でおなじみコギー姉妹などの手によって着々と計画が進む。

トトカンタ市の描写では、魔術士同盟支部長となったハーティアが登場。
「なぜだか、この街は復旧作業に慣れてるんだ」というセリフでにやり。だろうね、無謀編でオーフェンが街ぶっ壊しまくってたからなー。
交渉術も身につけてるようで、ちょっとかっこいいぞ。

ティッシは妊娠してるし、いやーびっくり。でも幸せそうでよかった。
マジクも頑張ってるみたいだ。だけど大陸の均衡が失われたというのは、彼らも戦火に巻き込まれる可能性があるってことで、少し気にかかる(そもそも戦ってばかりだったけど)。


ストーリーを牽引していくのは、1年間ティッシのもとで修行したクリーオウ。
以前と比べ目に見えて芯が強くなっていた。
彼女がオーフェンに再会するため、危険をともなう旅の引率役に選んだのは、なんとオーフェン暗殺の任につくコルゴン(エド)だ。
道中ふたりの会話が間の抜けたような緊張感のあるようなで面白い。
特に好きだったのはコルゴンが追手を殺しに向かい、それをクリーオウが止めるシーンの「安全」のやり取り。「守っておけば安全」と「殺しとけば安全」の違いというか。

しかしコルゴンはほんっと変な奴だなー。
人をいかに殺すかっていう思考しか無い人間って、普通の人と話すとこういうチグハグな感じになって、間が抜けて見えるものなのかも。
なんだか納得してしまう。
こっちは「変な奴」って思うけどそれが向こうの「普通」なんだから、生活していく上での常識、前提条件が根本的に違うんだろう。
コルゴンは「停止」であるという一節があったけど、オーフェンが大陸の歴史を語るシーンでは「停止」は「死」だということを言ってて、それじゃあコルゴンは死の象徴なのかなーなんてことを思った。

クリーオウの
「変わってしまった自分は、わたしたちといっしょにいられないって、彼は思ってる。わたしには――そのことだけは、彼の間違いだって言える。だって、わたしだって変わるもの」
って言葉はすごいなあ。
閉じた世界から開放され、大陸の変化、組織の変化、心境の変化、いろいろなものが変化にさらされる。そして変化が成長につながるものもある。それが本作のテーマみたいだ。

そういえば、最後に船長があのキースで笑った。
あのなんでも混ぜっ返して話をさらってく変態銀髪紳士…
この船、まさか泥舟じゃあるまいな。

http://booklog.jp/users/diesseits/archives/1/4904376692

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