2014-09-12

映画『悪人』★3

悪人 スタンダード・エディション [DVD]

あらすじ

土木作業員の清水祐一は、恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
馬込光代は、妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた。
孤独な魂を抱えた2人は偶然出会い、刹那的な愛にその身を焦がす。
しかし、祐一は連日ニュースを賑わせていた殺人事件の犯人だった ――。
光代はそんな祐一の自首を引き止め、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう。
Amazonより

※以下ネタバレあり。






感想

中盤あたりでもう真相、
「どういう出来事があって祐一が殺人を犯したのか」がわかる。

被害者の佳乃も、「夜、山中に男と二人きり」という状況で、
なんで男を逆上させるようなこと言うかな~……

と思ったけど、それで殺していい訳はないし、
直後のお父さんの言葉(幻影に傘を差し出すシーン)を聞いてると泣ける。



そのあと祐一の家に警察がいると祖母から電話、
光代をやや強引に連れ出し、愛の逃避行。
このへんはちょっとロマンス色強すぎてピンとこない。

互いに惹かれ合い、
光代は彼の自首をクラクション鳴らして止め、灯台にふたり隠れる。
愛を確かなものにしていくが、そんな時間は長く続かず捜査隊が近づく。

最後に祐一が光代の首を絞めたのは、
警察に彼女が被害者だと認識させるためだったんだろうか。
小説だとそのへんの心情がよりわかりやすいみたいだ。
彼女に自分を忘れて新しい道を見つけて欲しいから、って意見はなるほど。
映画・悪人について… - Yahoo!知恵袋



なにより、佳乃のお父さん……柄本明さんの役と演技がすごくよかった。
葬式で警察に「こんなとこにいる暇があったら……!」怒鳴ったと思ったら、
息もつかせず謝って「お願いします……捕まえて下さい……お願いします……」
と涙ながらにお願いするシーン。

または、理容室で「お前が博多に住むのを許すから……!」
妻を怒鳴ってしまい、「私のせいであの子は……(死んだっていうの……)!?」
「そんなこと言ってない!!」「泣くな!泣いてもあの子は帰ってこない!」
妻、涙をこらえきれず部屋を飛び出す、というシーン。

このシーンは
「お母さんかわいそすぎんよ、娘死んで残った二人で感情ぶつけ合ってどうするんだ……」
って思ったけど、人間としてはそうする気持ちがわかる。
やりきれなさをついぶつけてしまう、どうしようもなさ。

犯行現場で娘の幻影に傘を差し出すシーンも良かった。
「なんしよるとか?こげん寒いところで……」
こういう死んだ人の幻影が見えるのって、
結構ありがちだから「あ~……」と思っちゃうんだけど、
これはお父さんの熱演のおかげで感情入ったなあ。



「だれが本当の悪人なのか?」ってコピーをなんとなく覚えてたので、
悪人がぞろぞろ出てくるのかと思ったら、
マスコミに怒鳴ったバスの運転手や大学生の友人みたいな、
人の良心の方が心に残る映画だった。

まあ金をだまくらかす悪い詐欺師も出てきたけど……
あの恫喝めっちゃ怖かったなあ……

でもタイトルが一番かかるところは、やっぱり最後に光代が言う
「世間で言われよるとおりなんですよね……
 あの人は悪人なんですよね……人を、殺したとですもんね……」
に凝縮されてると思う。

世間でいう「人殺し=悪人」と、自分が知る「彼」のズレ。

ついでにこのセリフは彼の望み通り、彼を忘れようと、
一般の「悪人」の認識に帰るような雰囲気も匂わせてる。
「(出所するまで)何年でも待つ」と言ってた光代だから、この心理変化はたぶん、
彼の望みをそのまま受け取ったって事なんじゃないかなあ。



橋には祐一がおばあちゃんに買ってあげたスカーフが結ばれていて、
それもまた印象的。

愛の逃避行には浸れなかったけど、人間描写は楽しめる作品だった。

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