2014-09-12

映画『恋の罪』★4

『冷たい熱帯魚』も観たいんだけどグロいのだめそうなんだよな~…
恋の罪 [DVD]

あらすじ

どしゃぶりの雨が降りしきる中、ラブホテル街のアパートで女の死体が発見される。事件を担当する女刑事・和子(水野美紀)は、仕事と幸せな家庭を持つにもかかわらず、愛人との関係を断てないでいた。謎の猟奇殺人事件を追ううちに、大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)と、人気小説家を夫に持つ清楚で献身的な主婦・いずみ(神楽坂恵)の驚くべき秘密に触れ引き込まれていく和子。事件の裏に浮かび上がる真実とは……。3人の女たちの行き着く果て、誰も観たことのない愛の地獄が始まる……。
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※以下、ネタバレあり。





感想

序盤のいずみちゃんのセリフ棒読み、
作家の旦那「僕の肉体を見て!」、
いずみとカオルがラブホ街で手を取り合ってぐるぐるぐる~「アハハハ ウフフフ♡」、
唐突にぶつけられるエロいペイント風船、
真っ裸で「いらっしゃいませ!試食いかがですか?おいしいですよ?」、
からのスーパーで客の手をおっぱいに当て「私も食べて!♡」

コメディかってくらいシュールだったけど、
途中からカオル、美津子さんのドスのきいたセリフにまじびびった。

美津子の役者さんいいなー、冨樫真さんというらしい。素敵だ。
あとその母親、志津がこれまた素敵なキチガイでいらっしゃって。
エルロイの『ブラック・ダリア』思い出すんだなー。



「城」とはなんぞや

作中最後で語られてたけど、
父親が好きな美津子はその間違った愛情を拒否された際カフカの『城』を渡され、
父にこう言われる。

「みんな城のまわりをぐるぐるまわってるだけなんだ。けして辿りつけない。
 お前にとって今は私が城なんだ」

最後に廃墟でも、
美津子「私を殺してくれる人を探してた」
いずみ「死ぬと城へ行けるのかしら?」
みたいなやり取りしてたし、「城」は「求めてやまないもの」って意味なんだと思う。

カフカの『城』は未読なので、ざっとあらすじをいくつか読んだが、
「城へ行こうとするが辿りつけない、
 職業によりがんじがらめになっている人間の様子」
を描いているらしい。

とすると、やっぱりその意味で合ってるよなあ、と思うんだけど、
美津子が途中「カフカの城じゃない」って言ってたのは、
自分の城はそれじゃないって意味だったのかな。
彼女の城は、お父さんだから。



「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」

これまた作中で何回も繰り返される詩。
田村隆一『帰途』。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙の中に立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
一部引用

いずみが最後まるで美津子みたいな風体になって、
男に蹴られ鼻から一筋の血を流し微笑むシーン。
詩の最後「ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる」を思い起こす。

美津子は詩の「涙の中に立ちどまる」という部分について、
立ち止まってしまうのは涙の意味(肉体)を知ってしまってるからだ、
知らなければ目から流れ落ちるただの水だ、と言ってた。

んじゃあ一滴の血の意味(肉体)を知ってたら、
いずみが流すこの血の中に、帰ろうとしてしまうのかな?
なんて考えたけど、どうだろね。考え過ぎかもしんないな。


とあるブログには、
「美津子は昼は文学科助教授として言語を教え、夜はそれを肉体化する」
って書いてあった。

彼女が『帰途』の詩を愛するのは、文学者だからこその言葉の煩わしさ……
障壁に悩んでるからなのか。

どっかのブログに、
「言葉があるが故に、人と人はそれを介さなければならない。
 直接愛することができない」
とも書いてあったっけ。それ今ならわかるなあ。

お父さんに愛を伝えたら、
彼は「城」という言葉で自身を囲ってしまったじゃないか。
言葉がなければ、意味のない世界だったら、
そんな障壁に立ち止まることもなかったのに。



殺害時、誰が何をやったのか?

これも自供があったものの、曖昧なとこはあるなあ。
以下自分の妄想を含む。


志津がマネキンをバッグに入れて持ってきて、廃墟付近で待機。
いずみが美津子の首を絞め、カオルが腕を押さえ、志津が刺す。
いつも余裕のカオルの顔が珍しく歪んでる。

この極限状態つくるのうまいなーと思った。
美津子「もっと絞めて」
志津 「もーっと絞めろォ」
これを延々と聞かされるんだから、恐ろしいことこの上なし。


殺害後、志津がカオルに解体を指示。
「おおいに手伝っていただいたおかげで」

美津子の「穢らわしい部分」を切り取りバッグへ。
代わりにマネキンをくっつけ、服を着せる。
服が赤いドレスとセーラーなのは、どちらも美津子の象徴だと思うけど……うーん。
清い状態で彼女の服を着せて、清らかな彼女にしたってことなのかな。
不浄を絶やすために。


壁に城って書いたのは……いずみであって欲しい。
ここが「城」だ、美津子は辿り着けたんだ、という意味で。ロマンすぎるか?
「母は何でも知ってるのよ」って言ってたから、
城のことを知ってた志津が書いた可能性もあるけれど。
でも彼女なら城=夫に辿り着いて欲しくないはずだよね。

志津、カオルにバッグを持たせて自宅へ帰る。
カオルはさすがに異常すぎて、精神やられて自殺(顔歪んでたし)。


いずみも自宅へ。カーペットにペイント弾の跡が付着。
……いや待てよ。
旦那の方が、美津子との件でペイントたっぷり浴びてるのか……
じゃあ旦那の服のがついたのかなー。

聴取時それを見て、刑事さんは席を立ったんだよね。
何か勘付いたんだと思うけど、その心理はよくわかんないなあ。
この夫婦の裏に自分たち夫婦を重ねたのか、
もうどうでもいいって思っちゃったのか。むむむ。



それぞれの終わり

美津子さんは城を求めて死んじゃったな。

いずみちゃんは美津子みたいになっちゃった。
城を求めて、でも辿りつけなくて、永遠にまわりを周ってそう。

刑事さんは最後ゴミ収集車を追ってった。
序盤の同僚の話と重なる。
話に出てきた奥さんの場合は「私なにやってんだろ」って
両手のゴミ袋を放り出し、プチ家出。
3日経って帰ってきた……らしい。

刑事さんの場合は、円山廃墟前に来ちゃって、
愛人からの電話も鳴るしで、結局元に戻っちゃいそうだよね。
収集車に気づくまでは、携帯切って夫との時間を大事にしようって雰囲気あったのに。

ざーんねーん、愛欲地獄へようこそ(再)。



ほか


  • 美津子が助教授から娼婦へ変身する時
    「しんすけはどこに行ったの?しんすけは死んだよ。じゃあしょうがないよね~」
    しんすけはお父さんの名前(絵画のサイン)
  • 旦那と美津子がセックスしてペイント弾ばっしばしぶつけられるシーン、
    ネオンみたいな花火みたいな、すごくキレー。
    んで、終わった後の美津子さんが超美人。
    このあと死ぬってわかってた顔?(殺すように仕向けてたけど)
  • 「売春」の捉え方が面白い。
    愛がないなら金を介す、金を介すと自分の体の立ち位置がわかる……だっけか。
    なるほどだった。
    そして5000円稼いだ「記念碑」?
    言葉じゃなく体でおぼえる授業の一貫てことなんだろうけど、エグいね。
  • 美津子と出会った晩のふたりの色が特徴的。美津子が赤、いずみが緑。
    いずみが最後、赤になってたら面白いよなー。なってたかな?かもしれない。
    魔女っ子クラブで服選んでもらった時はピンク系の赤だった。
  • 数回使われてるクラシックはマーラー交響曲第5番だって。
    感想ブログ読むととても真面目に考察されてるんだが、
    私は単純に魔羅とかけて使ってね?みたいな下衆思考がとまらん。
    だってそういうの絶対好きだろこの監督……
    試食のウィンナーでかくしてくとか、そんなんやってるし。
  • 疑問:刑事さんの首絞めてた、赤いドレスの女、だれ?



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2 件のコメント:

トロ さんのコメント...

七重さんブログ更新お疲れ様です。園子温監督作品見られたのですね~。
自分は愛のむきだし、ヒミズ、自殺サークルとみていて、この作品は未見です。
東電OL殺人事件を下敷きにしているのですよね。でも感想拝見していると、
あまり事件の概要をなぞっている感じではなさそうですね。
「城」のくだりがとても興味深かったです。
カフカの「城」って《未完》の作品です。
城に入りたくても入れない。何とか入ろうとするけれども
何かしらの障害が出てくる。
でも入れるかどうかはわからないんですよね
《未完》なので・・
ここに全てが有るような気がします。
《未完》のままだから良かったんだと思うんです。
もし、城という最終点にたどり着いてしまった時、
そこに有るのは・・何だったんだろうと思います。
達成したその先にあるものは「達成しての愉悦」「思い描いたものとは違う絶望」
色々有ると思いますが・・園監督もそんな《未完》を意識していたのかも知れませんね。
実際の元事件モデルの被害者も慶応大を出て東電にはいり
お金のためでは決して無い”色”を売り
丸山という「城」を廻っていたのかもしれないですね。
因みに事件はまだ未解決です
最初に捕まった方も無罪判決を受けたので、
実際の事件もまた《未完》で終わっています。

七重綾 さんのコメント...

読んでくださってありがとうございます!
初の園子温監督作品でした~。
Huluには4作品あったので、『冷たい熱帯魚』以外は見てみようと思ってます。

おっしゃるとおり、実際の殺人事件とは形を変えている作品です。

カフカの話を以前にもしましたね!
なるほど、物語の概要を知ると、未完であることさえ思惑であるかのように感じるなあ。
「永遠に辿りつけない」のではなく、「永遠に辿りつけないかどうかもわからない」から、
城を求めてしまうのですね。

最後の方で、美津子…元事件の被害者役…が、こういうことを言うんです。
「死んで城に行けるかはわからないけど、(ぐるぐるまわってるだけの)今よりはまし」
彼女の愛する父親はもう亡くなっているので、
彼女は死ぬことで彼の近くに、城の入口に立とうとしたのかもしれません。
だけど城を築き、彼女を寄せ付けなかったのは父親の意思なので、
死をもってしても入口には入れない。

彼女の物語もまた、未完で終わってしまったと言えるのかもしれません。