2015-07-13

『十角館の殺人』綾辻行人 ★4

バイトで知り合ったミステリ好きの女性に勧められて。 本好きの人と知り合えるのは嬉しい!


話は「孤島もの」を踏襲した上で展開する「孤島もの」。

外部との連絡手段はなく、迎えの船も数日後、その間に人が死に、残された者は錯乱、憔悴……というようなパターンだが、無人島に乗り込むミステリ研究部員たちはそれを踏まえて

「この状況はまさにクリスティの『そして誰もいなくなった』!」
「招待者が犯人ってパターンだろ」
「そんなのありきたりだね。俺が犯人なら…」
と、犯人のパターンまで挙げてしまう。

結末に関わるようなこと言っちゃって大丈夫か、と思ったけどミステリ好きな読者はそれくらい当然考えるだろうし、だとしたら触れた方が楽しめるかー。
その上で意外な展開にしないといけないんだから、ミステリ作家って大変だ。


メンバーはそれぞれミステリ作家の名前をあだ名にしていて、「エラリイ」が「Q.E.D」を引き合いに出したり、「この私、エラリイ・クイーンに挑戦する者はいないかな」と挑発したり、楽しい。

しかしこんなセリフを吐けるとは、「エラリイ」はどんだけ自分に酔ってるんだか。
おもろい人。
1番好感もったのは医学部のポウでした。


部員らの事件とは別に、島で起きた過去の殺人事件も絡むが、こちらの真相に近づく過程の方がぐいぐい引き込まれた。
犯人が判明する瞬間目がまんまるになったので、それだけでもう、読んでよかった。


※以下結末のネタバレあり。












前置きが長くて「いつ人が死ぬんだろう」と思ってたら、一旦始まれば早かった。
あまりにコロコロ死ぬので、みんな演技で担いでるんじゃないかと疑うくらい。
命が石ころのようだ。

千織の死が動機として、なんで親友のオルツィまで殺さなならんのだ、と憤りも感じた。
追悼の気持ちまで踏みにじるとは。
アガサの死で吐き気を催したのは演技じゃなさそうだが、だとしても犯人に同情の余地はないなあ。

犯人がわかった時はかなりびっくりした。
「お前がヴァンか……!!」口ポカーン。
モーリス・ルブランだと思うじゃないか~!!
叙述トリックってのかな、だまされた!!

あとはー、探偵役の島田の存在が中途半端に感じた。
最後なぜ犯人がわかったんだろう。
幕引きも結局手紙に書いた自供だからなあ。

エラリイについて。
最初自信過剰で好きじゃなかったんだけど、あれだけ偉そうだったのに、最後生き残って人の出入りが無さそうな地下室を通ってもまだ見当違いの犯人を追ってたので、「かわいそすぎるだろ!」と。憐憫とも愛着ともつかない気持ちがわいてしまった。
死んじゃったけどさ…。良いキャラだ。

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