『黒猫』ポー★4
猫にひでえことするな……かわいそうだろう、ほんとに……
昔の作品だと思ってたら、最後の劇的効果に驚かされた。
死体が眼前にすっくと立つ恐ろしさ。
構図は『告げ口心臓』と同じで、「本能に従う自分(語り手)」と「社会に従う自分(良心)」が対立。
語り手は後者を抑圧するが、代わりに周囲に投影され、警告を送ってくる。
それが黒猫に象徴される。
また、『告げ口心臓』の語り手が悪に無自覚なのに対し、『黒猫』の語り手は悪を悪と知っている。
『心臓』の語り手よりも、分離が進んでない状態?
作品の重要な要素「天邪鬼」について。
うーん、難しい。
以下、
a. 本能
b. 良心
c. それらを統合した自分
と単純化して書いてます。語り手は「本能」が強い「自分」。
「天邪鬼」が描かれる印象的シーンは次の2つ。
(1) 男が涙を流して黒猫を吊るす。
自分の魂を苦しめるからこそやる=天邪鬼
(2) 完全犯罪が成立、の時になぜかペラペラ喋り出し死体の入った煉瓦を叩く。
自分を破滅させる行為=天邪鬼
で、罪の告白が「天邪鬼」だとしたら、
ということで、『告げ口心臓』の最後に書いたことはちょっと違ったかなあ。
自白が結果的に自己救済につながったとしても、それはあくまで結果で、付随的なもの。
自白した理由は「自己破壊の衝動に駆られたから」、それのみ。
ポーの『天邪鬼』という作品に出てくる説明だと、「それ以上分析も分解もできない衝動」というから、やはりそういうことなんだと思う。
だとすると、やっぱり「良心」と呼ぶのは憚られるなあ……。
だって自分を破滅させようとしてるのに、「良い心」かあ?
納得いかないんだよなあ。
だいたい「本能」も「良心」も、「自分」だけど、善悪の基準違うし。
ヒートアップしてきたとこでWikiを読んだら、英語では「良い」という意味を含まないらしく、訳の関係もあるのかもしれない?ふーむ。
Wikipedia - 良心
しかし『ウィリアム・ウィルソン』を読むと、この自己破壊衝動のあまりの強さに驚く……。
あまりに悲劇的で理解が難しい……。
『天邪鬼』の感想と合わせて、話はつづく。
昔の作品だと思ってたら、最後の劇的効果に驚かされた。
死体が眼前にすっくと立つ恐ろしさ。
構図は『告げ口心臓』と同じで、「本能に従う自分(語り手)」と「社会に従う自分(良心)」が対立。
語り手は後者を抑圧するが、代わりに周囲に投影され、警告を送ってくる。
それが黒猫に象徴される。
また、『告げ口心臓』の語り手が悪に無自覚なのに対し、『黒猫』の語り手は悪を悪と知っている。
『心臓』の語り手よりも、分離が進んでない状態?
天邪鬼
作品の重要な要素「天邪鬼」について。
うーん、難しい。
以下、
a. 本能
b. 良心
c. それらを統合した自分
と単純化して書いてます。語り手は「本能」が強い「自分」。
「天邪鬼」が描かれる印象的シーンは次の2つ。
(1) 男が涙を流して黒猫を吊るす。
自分の魂を苦しめるからこそやる=天邪鬼
- 社会道徳的に悪。
- 「自分」と「良心」を追い詰める行為。
- 「本能」が行わせる。
(2) 完全犯罪が成立、の時になぜかペラペラ喋り出し死体の入った煉瓦を叩く。
自分を破滅させる行為=天邪鬼
- 社会道徳的に善。
- 「自分」と「本能」を追い詰める行為。
- 「良心」が言わせる。
で、罪の告白が「天邪鬼」だとしたら、
- 「自分」を破滅させるからこそ行った。
- =社会にとって善だからやるわけではない。
- =自分が救われるからやるわけでもない。
ということで、『告げ口心臓』の最後に書いたことはちょっと違ったかなあ。
自白が結果的に自己救済につながったとしても、それはあくまで結果で、付随的なもの。
自白した理由は「自己破壊の衝動に駆られたから」、それのみ。
ポーの『天邪鬼』という作品に出てくる説明だと、「それ以上分析も分解もできない衝動」というから、やはりそういうことなんだと思う。
だとすると、やっぱり「良心」と呼ぶのは憚られるなあ……。
だって自分を破滅させようとしてるのに、「良い心」かあ?
納得いかないんだよなあ。
だいたい「本能」も「良心」も、「自分」だけど、善悪の基準違うし。
ヒートアップしてきたとこでWikiを読んだら、英語では「良い」という意味を含まないらしく、訳の関係もあるのかもしれない?ふーむ。
Wikipedia - 良心
しかし『ウィリアム・ウィルソン』を読むと、この自己破壊衝動のあまりの強さに驚く……。
あまりに悲劇的で理解が難しい……。
『天邪鬼』の感想と合わせて、話はつづく。
関連
- 感想書いてたらポー短篇の「良心」と「天邪鬼」について考えることになったシリーズ。
(1) 『告げ口心臓』★4
(2) 『黒猫』★4 ここ
(3) 『ウィリアム・ウィルソン』★5、『天邪鬼』★3 - 『ポーのperverseness再考』松阪仁伺
キリスト教の2種類の罪との関係。
原罪/現行罪 → 「知らずに犯す罪」と「罪と知ってて犯す罪」
飲酒と猫殺しがこれに対応するという論。 - 境界例の治療技法6:患者への理解と対応-投影性同一視による操作
天邪鬼について調べるうち知ったもの。
ポーの小説に描かれるような出来事が、実際にもあるのだなあ…。