2015-09-19

ドラマ『ベター・コール・ソウル』S1★5

Netflixで視聴可。
『ブレイキング・バッド』のスピンオフで、悪徳弁護士ソウル・グッドマンを主役にした物語。
シーズン1を見てきた。

意外なことに、ソウルはまだ「ソウル」と名乗ってはおらず、本名のジミー・マッギルで弁護士稼業。
髪はぺたんこ、くたびれスーツ、依頼の電話はゼロ、貧乏である。
公選弁護人として金を得、ネイルサロンの裏にある、小さな倉庫のような事務所で依頼が来るのを待つ毎日。
ここからどうやって彼が「ソウル・グッドマン」へと変わるのか!

※以下、ネタバレあり!

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ラストシーンの意味

非常に大きな訴訟となるであろう案件を持ってきたのに、雇用を認められなかったジミー。ところがキムとハワードの尽力もあって、協力事務所のパートナーへ、という話がくる。
「11時、裁判所に事務所の人がくるから、挨拶をしたら?」とキム。
やっとジミーの努力が報われた……はずが、彼は挨拶せず裁判所を出る。

ふと、横領夫婦のバッグを盗んだ時のことを思い出し、駐車場の管理人マイクと会話。
「160万ドルの金が、誰にも知られず俺の机にあったんだ。80万ずつ分けてもよかったのに、なぜそうしなかった?」
「“正しいこと”をしてると言ってたぞ。なぜ俺が盗まなかったか知りたいか?」
「ああ」
「依頼通りに仕事をした。それだけだ」
「あの時俺を止めたものはもう二度と――俺を止められない」

急展開のラスト。
ジミーにとっていい話でしかなかったのに、なぜ蹴ったのか?

帰る前にマルコの形見の指輪を触っているし、やはりマルコの死が影響を与えたのかなー。
マルコは死ぬ間際、ジミーと一緒に昔よくやってた詐欺をやりたがった。
それは、ジミーの詐欺の才能を「本物」だと思ってたからだし、マルコにとって「特別なこと」だったから。

兄に諭されて足を洗ったけれど、「自分の本分はこっちだ」と気づいたんじゃなかろうか。
ハワードの物真似をし、キムに言われた「あなたらしさ」の答えがここにあるのだと思う。

パートナーの話を受ければ、兄の言うがまま「良識のある自分」を取り繕って生きる事になる。
それに、高齢者専門の弁護も最初やる気なさそうだったし、やりたい事と違うのかもしれない。
彼は軌道に乗りかけた偽の人生よりも、自分に正直に生きる事を選んだ。

「何が“正しいこと”だよ、俺は金が好きだし、あれは盗んでもバレない金だったじゃないか。何やってんだよ俺は!」
マイクに喋りかけた時、そういう心境だったのかも。

するとマイクが
「俺が盗まなかった理由。依頼通りに仕事をした。それだけ」

これを受けてジミー、
「あの時俺を止めたものはもう二度と、俺を止められない」

良識や正義と決別し、マイクの言う「依頼通りに仕事をする」人間へと変わっていく。
ソウル・グッドマン、金さえ払えば善悪関係なく依頼を受ける弁護士に。

……こう考えると、ソウル・グッドマンへの軌跡が見えるようなS1ラストだった。
個人的にはここで終わっても納得いく。
まあチャックの事が解決してないし、もっと見たいけど!
S2でキム落胆してるかなあ……。

あと、5話で人形を譲りたいお婆さんの遺言書を作ってる時、ジミーが
「弁護士の半分はバカ、あとはペテン師」
って皮肉を言うんだけど、伏線だったのかもしれない。
ペテン弁護士になっちゃったもんなあ。

チャックの電磁波アレルギー

ジミーの兄で、超頭が切れるけど今は外に出られない。
電磁波アレルギーと言ってたが、入院回で心因性の症状と判明。
どうも弟との関連で感じるストレスが原因っぽいよなあ。

良くなったのって、介護施設のシュレッダーパズルで証拠獲得、相手の弁護士と話し合って勝てそうだと思った時か。
話し合いの最後からチャックは喋りだして、自信を回復していってる。
弟が真面目に取り組む姿に安堵したのか、長く復帰できないでいる自分の不安が解消されたのか……外に出ても平気になった時は本当に嬉しかったんだけど。
その後の、弟にした仕打ちが酷すぎて。

「本物の弁護士じゃない」
自分は人生を捧げ勉学に励み研鑽を積み、法の何たるかを知ってきたが、弟は通信教育で学び、商売としか考えていない。そんな男を、自分の事務所に入れるわけにはいかない。
そういう気持ちの吐露があり、兄弟は決別。

なるほど、だからジミーのでっかい広告にもショックを受けてたし、公選弁護人として経験を積めと言ってたのか。
養護施設でのビンゴ大会……はまだいいかもしらんが、ケトルマン妻への当たり屋計画を知ったら、兄ちゃんショック死しそう。

でも集団訴訟の件に関しては、ジミーはほんとに頑張ってた。
もしかしたらこの件をきっかけに、変われるかもしれなかったのに。
それに毎日買い出しに行って、兄の世話をしてきたのもジミーだ。
自分とこで雇うのが嫌なら、キムがやったように別事務所紹介するとかさ……それも嫌だったのかなー…。

しかしわざわざハワードを悪役にしているところを見ると、チャックは良い兄に見られたいという思いはあるようだ。
法が関わることについて弟を許せないが、弟を愛してもいる。
この葛藤が、チャックの症状を重くしているのかもしれない。

2年前からだったっけ、症状が出たのは?
もしかしたら、弟が司法試験に合格した事がきっかけになってるのかもなあ。


ソウル・グッドマンのその後

視聴中は気づかなかったんだけど、1話冒頭のモノクロシーンは彼なんだって。
シナボンロールの店長かあ……。
『ブレイキング・バッド』でソウルが言ってたらしいね。

昔のCMを眺めたり、追手にビビったりしてたなあ。
なんかこう、背筋を丸めて生きてる感じが、とても切ない。


マイク

マイクがメインの6話だけ、シリーズの中では異質だ。
彼が息子を亡くした経緯や、それに関わる事件が描かれる。
『ブレイキング・バッドで』感情移入できるキャラがジェシーとマイクだったんだよね。
だから彼の人となりがわかる話で、感動した。
1話で描ききってるからすごいなあ。

ナチョと取引する男の用心棒になった時、男に「深入りするな」と忠告するシーンもあった。
ウォルターを思い出す。
彼は深入りしまくっちゃったから……。

マイクはまだガスと出会ってなさそうだ。
これからその出会いも描かれるのだろうか。
一気に危険度上がりそう。

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