2015-02-02

『ゴーン・ガール(上)』 ギリアン・フリン ★4

ゴーン・ガール 上 (小学館文庫)


感想


映画は他人事と思って観れたのに、小説は自分にも当てはまる所を見つけてしまった。
あーあ、なんてこった。

日記の最初に登場する、好奇心旺盛で奇抜な妄想が好きなエイミーは私と似てる。
さらに読み進め、いい女であろうと色々我慢する記述には同情心が芽生えた。
「もっと素直に感情出したっていいのに……でもこの部分は私とは似てないな」

自分と似てる/似てない、の軸で読んでる時点でやばい。

案の定、夫婦間の問題が顔を出すにつれ、「魅力的に思ってるものが色褪せる時が、自分にもやって来るのだろうか。だんだん石みたいな人間になってくのかなー」と、考え込んでしまった。
やるせなくなった。

日記の真偽は定かでないし、先の事は何もわからないのだから、落ち込む必要もない。
のに、囚われる。
こういうとこがほんと「イヤミス」だな~と思う。 ※嫌な気分になるミステリ


後半は二人の話に明らかな矛盾点が。
特に「夫/妻がセックスを拒否」、「夫/妻が子どもを望まない」
どちらかが完全に嘘つき。

ただ、セックスに関してここで私がニックを信用してしまうのは、p287のみじめさが、嘘では出せないだろうから。
家で避けられ、ふたりでいる時も間をクッションで仕切られ、会話もなく、もちろんセックスも拒否された状態で、

眠っているエイミーの肩紐を少しだけずらし、むきだしの肩に頬と手のひらを押しつけた。情けない思いでいっぱいになり、それきり寝つけなかった。ベッドを抜けだすと、シャワーのなかでマスターベーションをした。
ことを終えると、ぼくはバスタブのなかにうずくまり、水飛沫を浴びながら排水口を眺めた。ペニスは岸に打ち寄せられた小動物のようなみじめな姿で、左の太腿の上に垂れ下がっていた。打ちひしがれたぼくは、バスタブの底で涙をこらえた。

こういう、絶対口外したくないタイプの情けなさを、読者だけにとはいえ吐露してるニックの気持ちを考えると、切なすぎてなあ……。



町の荒廃


小説では、ニック達が住む「ノース・カーセッジ」の荒廃ぶりも印象的だった。
廃墟となったモールは実在するんだろうか?

映画版ロケ地の紹介ページがあったので貼っとく:
seMissourian.com: Local News: A guide to North Carthage: 18 'Gone Girl' movie filming locations in the Cape Girardeau region (09/30/14)



双子の関係

映画の感想でニックとマーゴがデキてると見かけたので。
一応小説版はp46、早々にこうある:

きみはマーゴとは違うから、誤解するかもしれない。だから言っておこう。妹とぼくは一度たりともヤッたことはないし、そんなこと考えたこともない。ほんとうに仲がいいだけだ。

映画がこれを踏襲してるかわからないけど、小説だとそうらしい。
ただし肉体関係はないとしても、心を許せる肉親であり、その愛情は深い。
エイミーとマーゴは互いにジレンマを抱えていた描写がある。



ほか、映画との違いは(下)の感想へつづく。



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