2013-06-09

『冷たい密室と博士たち』 森博嗣

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

2作目まで手を伸ばしてみて良かった。
1作目でS&Mシリーズは合わないかもなーと思ってたんだが、
今回はさくさく読めたし、純粋に楽しむことができた。

人物の描き方も1作目より軽くてとっつきやすいというか、入りやすい気がする。

それは、HP「浮遊工作室」によればこれが処女作とのことで、
そのへんも関係してるのかもしれないし、
1作目を構えて読んでしまったせいかもしれない。


犀川は頭ボサボサ、メガネでひょろっとしている人物なのか。
描写がくるまでは勝手にスナフキンを想像して読んでた。

今回犀川の印象も結構変わったなあ。
「怒れる自分」が登場する時以外は、穏やかで冷静。
タバコをよくふかしてて、よく微笑む。
スナフキン、意外とハマってると思うんだがどうだろ。
メガネをかけたスナフキン。


※以下ネタバレあり。





一番「うまい!」と舌を巻いたところは、被害者2人を計画に賛同させる口実。

「なんで非常口から入れることになったんだ、しかも木熊と市ノ瀬の2回!」
不思議で仕方がなかったんだが、
なるほど婚約発表でみんなを驚かせようという計画だったのか!
よく思いつくなあこんなこと。しかも自然だ。


前回、科学的・合理的精神に基づいたミステリは昔からの伝統のはずなのに、
「理系ミステリ」って言い方がなんで今もてはやされてるのか、と疑問があって。

森ミステリのブームもいまいちわからなかったんだけど、
巻末の解説を眺めていたらなんとなくわかった気がする。

要は、森さんの本は頭を良く見せたい精神を刺激するんだろうなーと。
「わかるわかる」って自尊心の糧にしたり、
真似して専門用語や思考法(解法?)を使いたくなったり。

人気の理由のすべてがそうとは言わないけど、部分的にはその要素があるはず。



引用

大気はミキサで撹拌されているようだ。
雨は吹き上げ、空気は飽和し、狂気で沸騰している。 p341
台風の表現。面白かった。


これで西之園君も喜多君も、自分の仮説が完全に崩壊したと思った。
フリダシに戻ったってね……。 p384
自分は誰が犯人かの目処も皆目たってない状態だったので、
フリダシに戻った感を一緒に味わってみたかった。


それに、こういった人間の感情を言葉で表現すること自体、円周率の小数点以下を四捨五入するみたいで、気持ちのよいものではありません。ここから先は本当に、憶測というよりも、僕なりの消化のしかただと思って下さい。 p387
どっかしらで割り切らないと言葉に出来ない。
でもそれは正確なものじゃなくなってしまう。


関連シリーズの感想

S&M01 『すべてがFになる』
S&M02 『冷たい密室と博士たち』
S&M03 『笑わない数学者』

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